― 90 ―する,縮環様式の異なる稀少多環式ノルセンブラノイド類 : イネレガノリド (18: 抗 CHIKV,抗白血病作用 ),ホリオリド (19: 抗 CHIKV),シヌラノルセンブラノリド A(20: 抗 CHIKV) に対して適用する.本研究を 2 年で完遂する計画を立てた(スキーム 2).本助成期間内の到達目標として,網羅的合成戦略の鍵となる共通中間体天然物スカブロリド A (1) の大量合成法の確立を定めた.この際,挑戦的課題として 1 工程の価値の最大化を意図した還元的渡環反応 (4 → 14 → 15 → 1) を鍵とする合成戦略を立案した.スキーム 1. A) 標的天然物群の構造と生合成および順合成経路,B) 共通中間体 1 の合成計画市販化合物である光学活性エノン 9 から 1 工程で調製可能なヨージド 5 と,ボロン酸エステル 8 を鈴木 - 宮浦カップリング反応で連結する.続いて,10 に対してメチル基の立体選択的な付加,TBS基の除去を順次行い,ジオール 11 へと誘導する.11 の立体的により空いた 2 級ヒドロキシ基を位置選択的にアシル化し,12 を調製する.12 に対して,Mo 触媒を用いる大環状閉環アルキンメタセシス反応を行い,大員環化合物 13 を合成する.13 に一重項酸素を作用させ,フラン構造を 1,4- ジケトン構造へと変換し,鍵中間体 4 を構築する.4 を光照射下還元的ラジカル条件に付すと,1 の特異な4 環性骨格を一挙に構築できると予想した.本反応では,適切に官能基を配置した大員環 4 の 3 次元構造を利用することで,2 つの環構造および 2 つの立体化学を一挙に構築する.鍵反応生成物 15 を酸処理し,C12 位に所望の立体化学を導入することで,スカブロリド A(1) の全合成を達成する.1 を酸処理することで C7=C8 二重結合を構築し,ヨナロリド (16) の全合成を達成する計画である.
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