令和6年度_2024_助成研究報告集
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図 2. メリナシディン IV の合成研究図 3. レスベラトロールのオリゴマー合成② フェノール由来二量体型生物活性天然物の高収束的全合成天然には,フェノールを介して連結した二量体型化合物もまた数多く存在する.本研究では,ワインに含まれるポリフェノール天然物であり,近年認知症の治療候補薬としても注目を集めているレスベラトロールのオリゴマーに焦点を当て,合成研究に取り組んだ(図 3).独自に開発した酸化的二量化反応を無保護のレスベラトロールに適用し,種々の混合溶媒系を検討した.その結果,酢酸エチルと水の混合溶媒系にて,酵素を用いた条件には及ばないものの,既存の化学変換の中では最も良い収率で二量化体であるε-ビニフェリンを与えた.しかし,未だ収率に課題を残しているため,今後条件の最適化,ならびに四量体の収束的合成を目指す予定である.③ モノテルペンインドール由来二量体型生物活性天然物の高収束的全合成天然には,モノテルペンインドールを母核とする様々な二量体型生物活性天然物が数多く存在する.その代表化合物がビンブラスチンであり,抗がん剤として臨床利用されている.ビプレイオフィリンもまた,新規抗ガン剤や抗マラリア薬の医薬品リード化合物としての活用が期待されるが,植物の樹皮 1 kg に対してわずか 2 mg 程度しか得られないことが報告されている.そこで本研究では,ピロカテク酸の酸化を介する形式的環化付加反応を開発し,ビプレイオフィリンの量的供給を可能にする効率的合成法の開発に取り組んだ(図 4).当研究室で確立した合成経路に従い合成したプレイオカルパミンとピロカテク酸を,FePc(CO2H)8 を用いた酸化条件に付した結果,期待通り,複数の官能基を損ねることなく酸化的カップリング反応が円滑に進行し,ボアカルジン A をほぼ定量的に与えた.続く,ボアカルジン A を用いた二回目の酸化的カップリング反応もまた進行し,標的化合物であるビプレイオフィリンを 69% と高収率で得ることに成功した.このように,収率や反応時間において,既存の手法を凌駕する革新的な二量化反応を開発し,世界初の de novo 合成を達成した 4).― 86 ―

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