令和6年度_2024_助成研究報告集
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図 1. 本研究の概略図結果及び考察① アミノ酸由来二量体型生物活性天然物の高収束的全合成トリプトファン由来の二量体型天然物は,各種アミノ酸に由来する類縁体が 100 種以上も存在し,強力かつ広範な生物活性を有する.なかには,天然物では珍しいヒストンメチル基転位酵素の阻害活性を有する化合物も存在し,エピゲノム創薬の観点からも注目を浴びている.本研究では,本化合物群の中で最も酸化段階が高く,未だ化学合成が達成されていないメリナシディン IV の世界初の全合成を目指し,研究に取り組んだ(図 2).まず,独自に開発した鉄フタロシアニン触媒を用いる酸化的二量化反応を応用し,二つのアミノ酸単位からわずか 3 工程でメリナシディン IV の全炭素骨格の構築に成功した.その後,混んだ位置でのジヒドロキシ化を含む,ジケトピペラジン環周辺部の酸化反応とジスルフィドの導入により,高い酸化段階を有する平面構造の合成を完了した.しかしながら,合成した化合物は天然物の 1H-NMR のデータと一致しなかった.現在,X 線結晶構造解析により,成績体の立体化学も含めた詳細な構造決定を試みている.また,並行して,酸化段階の高い単量体ユニットの合成も進めており,合成が完了し次第,収束的な合成にも挑戦する予定である.― 85 ―

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