療効果が得られていないのが現状である.そこで,本研究開発では(a)Morpholino 型 ASO にoctaguanidine dendrimer を 3’ 末端側に共有結合した Vivo-Morpholino,(b)東京科学大学(旧東京工業大学)西山伸宏先生の高分子ミセルによるユニット PIC 型核酸 DDS,(c)静岡県立大学浅井知浩先生の電荷反転型 LNP 製剤による核酸 DDS を搭載した ASO,の 3 種類の DDS 搭載 ASO を用いて in vivo における活性を CDX/PDX モデルにより評価し,並行して国立がん研究センター濱田哲暢先生の ASO の薬物動態解析技術を用いて作用部位への集積性を確認することにより,TP53-IRAV に対して最適化した DDS を搭載した TP53-ASO の開発を試みた.結果及び考察まず,TP53-ASO(morpholino) 単剤で in vitro における増殖抑制効果を検討したところ,p53 タンパク質の発現量は TP53-ASO により回復するものの,増殖抑制効果は marginal であった(data not shown).TP53-IRAV 陽性 A549 細胞の増殖は TP53 機能喪失に依存しないことから,この結果は想定した通りであった.そこで,次に TP53 機能喪失が DNA 傷害性抗がん剤への耐性の原因となることに注目し,TP53-IRAV 陽性 A549 細胞への TP53-ASO + CDDP(シスプラチン)併用効果を検討したところ,予想通り両者の併用により優れた細胞増殖抑制効果が得られ,アポトーシスを誘導することが確認された(図 3).図3.CDDP+ASO 治療下の細胞増殖(A)およびアポトーシス誘導率(B)上記の結果を踏まえ,TP53-ASO と CDDP の併用による TP53-ASO の proof-of-concept(POC)取得を目指すこととした.まず,各連携施設で実施する in vivo 実験の治療プロトコールをなるべく共通のものにし,実験結果を比較可能とするために,CDDP による治療を 4 週にわたり実施しても,レシピエントである Nude マウスが生存するような治療レジメンを策定するために,TP53 WT-KI(synonymous mutation を knock-in した対照群)および TP53-IRAV1 陽性細胞 A549 細胞を Nude マウスの皮内に移植し,3 mg/kg,4 mg/kg,5 mg/kg の 3 種類の dose で移植後 7 日目から毎週腹腔内投与したところ,5 mg/kg で WT の増殖が軽度に抑制可能な傾向があり,また 35 日目の時点で全例が生存し,採血で血算異常を認めなかったため,CDDP 5 mg/kg/week ip を共通治療プロトコールとして採用した(図 4).― 75 ―
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