図2.核小体異常を検出するスクリーニング系― 70 ―一次スクリーニングには,京都大学ドラッグディスカバリーセンターの既存薬・阻害薬コレクションを用いた.二次スクリーニングはメチルセルロースを含む半固形培地上に細胞を播種し形成されるコロニー数をカウントした.この系では細胞のクローナルな増殖をモニターすることができる.結果及び考察本研究では,白血病細胞での核小体に作用する化合物を同定するため, (1) 核小体を可視化した細胞株の樹立,(2) 核小体異常を数値化する画像診断プログラムの開発,(3) 1600 化合物の既知ライブラリーでのハイスループット小規模スクリーニングを行なった.(1) 核小体を可視化した細胞株の樹立第一に,核小体スクリーニングに使用する細胞の樹立を行った.白血病細胞株5種類に対して,核小体検出・ポジティブコントロール薬剤への応答・核小体特徴量のばらつき等を指標に選定し,ヒト白血病細胞株 KCL22 を用いてスクリーニングを行うことに決定した.核小体に局在する NCL-GFP融合遺伝子および核に局在する H2B-mCherry 融合遺伝子をコードするプラスミドを導入することで核と核小体を可視化したラインを樹立した.プラスミド導入にはウィルスベクターを用いることで上記タンパク質が恒常的に発現する細胞を作成し,シングルセルソートを行なった.最も観察に適した細胞をスクリーニング細胞として使用することとした.また,化合物スクリーニングと並行して,遺伝子破壊によるスクリーニングを行うため,ドキシサイクリンにより発現誘導可能な Cas9 発現用のプラスミドも同時に導入した(図 3 左).(2) 核小体異常を数値化する画像診断プログラムの開発まず,ポジティブコントロールの選定を行った.核小体を阻害する薬剤として知られている,ドキソルビシン (DOXO),アクチノマイシン D (ActD),マイコフェノール酸の効果を検討した.すべての薬剤について,核小体の変化を検出するのに適した濃度設定を完了した.また薬剤ごとに,核小体の変化が異なることから,各々の変化の特徴量の抽出を行った.画像解析法 正常な核小体の特徴量および,正常範囲のばらつきを抽出するため,薬剤処理なし(DMSO 0.1%)の条件で 384well プレート 13 枚分のデータを6時間ごと 48 時間まで取得した.また,同時に脂質とミトコンドリアを可視化・撮像することで,これらのデータも核小体の変化と紐づけて解析可能とした.上記で取得したネガティブコントロールデータとポジティブコントロールデータから,特徴量抽出を行い,画像解析法の開発を行った(株式会社 HACARUS との共同研究).特徴量について,①人が決定した特徴量,②各細胞のテクスチャに関する特徴量 GLCM を用いる手法,および③ Deep Learning 法の3つを検討し,
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