令和6年度_2024_助成研究報告集
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図1.胃がん間質におけるPDGFリガンド・レセプター発現の意義Ⅱ.スキルス胃癌シンジェニックマウスモデルの確立さらに,胃がん自然発症マウス腫瘍からオルガノイド経由で樹立したマウス胃がん細胞(GAN-KP細胞) を,シリアル・トランスプラントすることで,高度な線維化を伴う腫瘍を形成するモデルを確立した(図2).腫瘍間質多様性の評価として,Spatial Transcriptomics (VISIUM;10X)によりケモカイン産生能が高いストローマ分画の存在を明らかにし,さらに免疫抑制性微小環境の形成についてシングルセルRNAシーケンシングを用いた検証によりマルチキナーゼ阻害剤(レゴラフェニブ)の投与によって,アルギナーゼ1(Arg1)を発現するNeutrophil分画であるPMN-MDSCsが有意に減少することを明らかにした(図3).さらに,このシリアルトランスプラントをおこなった線維化腫瘍モデルは,免疫チェックポイント阻害剤(抗PD-1抗体)に対する治療抵抗性を示し線維化に伴う抗PD-1抗体レジスタント腫瘍モデルとして,複合がん免疫療法の検証に最適であることを証明した.さらにPDGFRシグナルの阻害による腫瘍間質リプログラミングにともない,抗PD-1抗体に対する治療抵抗性が改善することを明らかにした(図4)1).― 63 ―

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