おいて転写伸長や転写終結のプロセスが非常に重要な役割を果たしていることがわかってきた.Pol II のプロモーター近傍における一時停止の解除には,P-TEFb や ELL/EAF などの転写伸長因子の働きが必要である.私はこれまでにメディエーター転写複合体のサブユニット MED26 が,その N 末端ドメイン(NTD)によって,転写伸長因子を P-TEFb や ELL/EAF を含む複合体 “Super elongation complex”(SEC)と結合し,c-Myc や Hsp70 などのがん関連遺伝子において,転写伸長を促進することを明らかにした(図 1 参照)1).SEC は ELL/EAF,P-TEFb に加え MLL 融合パートナー因子の AF4,AFF4,AF9 や ENL をサブユニットとして有し,混合型急性白血病の発症に深く関与している 2).さらに,私は MED26 の NTD と結合するもう一つの新規複合体 “Little elongation complex”(LEC)を同定した.LEC は転写伸長因子の ELL/EAF に加えて,ICE1,ICE2 をサブユニットとして有する.解析を行ったところ,MED26 を含むメディエーター複合体は LEC と結合することによって,small nuclear RNA(snRNA)や複製依存性ヒストン遺伝子などの mRNA にポリ A を含まない遺伝子において,Pol II の転写終結を促進することを明らかにした(図 1 参照)3).最近,私は MED26 がLEC と共役することによって,ポリ A 付加シグナルの前に Pol II を一時停止させ,転写を終結さ4, 5).このように,せることで,mRNA にポリAが付加されないように制御することを明らかにした私は MED26 が SEC と LEC を使い分けることによって,それぞれポリ A のある mRNA とポリ A のない mRNA の転写を促進することを解明した(図 1 参照).図1.Med26 は SEC と共役し,ポリ A のある遺伝子の発現を制御する一方で, LEC と共役し,ポリ A のない遺伝子の発現を制御する.これまでの解析によって,SEC と LEC が,MED26 を含むメディエーター複合体・Pol II をぞれぞれの標的遺伝子領域にリクルートし,これらの遺伝子群の発現を統合的に活性化することが明らかとなってきた.すなわち,(i)c-Fos,c-Jun や EGR などの血清応答性遺伝子や分化制御遺伝子では,刺激時に SEC によって MED26 を含むメディエーター・Pol II 複合体がリクルートされ発現が誘導されること,一方で,(ii)複製依存性ヒストン遺伝子領域では,細胞周期の S 期に Cajal bodies(CBs)と Histone locus bodies(HLBs)の隣接する領域において LEC によって MED26 を含むメデ― 47 ―
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