令和6年度_2024_助成研究報告集
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エンドクリンは精巣上体の蛋白質分泌細胞としての細胞分化にグローバルに寄与する一方,ルミクリンはさらに,精子成熟に関わると考えられる特定の蛋白質群の分泌に大きく寄与していることが分かった14, 15).このように,精巣上体はエンドクリンとルミクリンによる異なる作用を受けながら,精子成熟器官としての特質を発現していると考察された.また,発現制御される個々の遺伝子の進化獲得情報から,このような精巣上体の機能は,脊椎動物の陸上進出と受精の体内化に伴って発達してきたと考察された(図3e)15).図3.RNA-seqによる精巣上体のプロファイリング.両側の精巣を摘出してルミクリンだけでなく性ホルモンによるエンドクリンの作用も除いた場合(a)の遺伝子発現の変化は,Nell2遺伝子のノックアウト(b),生殖路の結紮(c),W/Wv変異による生殖細胞の欠損といったルミクリンシグナルのみを欠く場合に比べて,より広範なものとなる.このようなエンドクリンとルミクリンによる精巣上体の細胞分化や遺伝子発現の制御は,脊椎動物の陸上進出と受精の体内化に伴って発達してきたと考えられる(e).おわりに生体内の雄性生殖路において,精子がどのように機能的に成熟し,それがいかに制御されているのかは,長らく不明な点が多く,いわばブラックボックスであった.本研究では,研究代表者が見出し― 43 ―

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