はNELL2やROS1欠損マウスと同様に雄性不妊と精子成熟不全を示した(図2b-d).またNICOLはNELL2と強固な分子複合体を形成したことから(図2e),NICOLはNELL2とリガンド複合体を形成してして機能していると考察された.一方トランスクリプトームや蛋白質相互作用解析から,マウスだけでなくヒトにおいてもNELL2とNICOLによるシグナル伝達が精巣上体における精子成熟の制御に関与する可能性が示唆された11).以上の結果から,ルミクリンによる精子成熟の未知の制御機構の一端が明らかとなった12, 13).図2.新規なルミクリンリガンド分子NICOL.NICOLは比較的小さな分泌蛋白質であり(a),遺伝子をノックアウトすると雄性不妊となる(b).ノックアウトマウスの精子は卵管を上行出来ない(c),卵子に結合出来ない(d)といった受精能力の不全を呈する.さらにNICOL蛋白質は既知のルミクリンリガンドであるNELL2と強固な分子複合体を形成する.2.精巣上体のプロファイリング精巣上体の遺伝子発現や細胞機能は,ルミクリンだけでなく,精巣からのアンドロゲンによるエンドクリン制御も受ける.しかしこの両者の制御がもたらす作用の違いは系統的に解析されていなかった.そこで,ルミクリン不全であるNell2ノックアウトマウス,生殖細胞の欠損によって同様にルミクリンシグナル伝達を欠くW/Wv変異マウス,アルキル化剤によって生殖細胞を枯渇させたブスルファン投与マウス,精巣と精巣上体の管腔連絡を結紮によって物理的に遮断したefferent duct ligationマウス,精巣を摘出してアンドロゲンの作用を取り除いたorchidectomyマウスの精巣上体からRNAを抽出してRNA-seqを行い,得られたトランスクリプトームの比較解析を行った(図3a-d).その結果,― 42 ―
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