結果及び考察yRAMOは,信頼度が一定程度高い予測に基づいた3種類の特性が,全て同時に最適化された分子の設計に成功した(図1a).信頼度を考慮しない場合の生成結果(図1b)と比較すると,DyRAMOでは信頼度が比較的高い値に収まっていた.さらに設計された分子の中には,承認薬の一種であるゲフィチニブが含まれていた(図1a-1).これらの結果は,DyRAMOが予測の信頼度を適切に調整しつつ特性の最適化を行い,有望な医薬品候補を設計する能力を有することを示唆している.6.3376.78.310.490.570.773.8372.27.550.220.220.2812.142.47.790.440.440.92(pIC50)(1h remaining (%))(μcm s-1)4.0192.77.460.280.300.32!"!#"!$"$##$"$!"#$"$$$""$###$a-1 ゲフィニチブ特性値(予測値)予測信頼度阻害活性代謝安定性膜透過性a-2b-1b-2図1 設計された分子の例 (a) DyRAMOで信頼度を調整した場合 (b) 信頼度を考慮しない場合.表中の値は,特性の予測値および予測信頼度を示している.おわりに従来のAIによる分子設計では,AIが有望であると判断した分子が実際には適切でない,という現象が発生する可能性が高く,これが分子設計のプロセスの効率を低下させる要因の一つとなっていた.DyRAMOを導入することで,設計段階で信頼性の高い評価に基づき分子を選定できるため,開発の手戻りが減少し,結果として医薬品開発のプロセスが加速されることが期待される.なお,本研究成果は,Nature Communications誌に掲載された3).謝 辞この度は,公益財団法人 中外創薬科学財団より奨学金をご給付賜り,心より御礼申し上げます.引用文献 1. Fromer J. C. and Coley C. W.: Computer-aided multi-objective optimization in small molecule discovery, Patterns, 4, 2, 100678 (2023).2. Ishida, S., Aasawat T., Sumita M., Katouda M., Yoshizawa T., Yoshizoe K., Tsuda K., Terayama K.: Chemtsv2: functional molecular design using de novo molecule generator, WIREs Comput. Mol. Sci., 13, e1680 (2023).3. Yoshizawa T., Ishida S., Sato T., Ohta M., Honma T., Terayama K.: A data-driven generative strategy to avoid reward hacking in multi-objective molecular design, Nat. Commun., 16, 2409 (2025).― 328 ―
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