の UAS:R53BP1 コンストラクトを Tol2 トランスポゾンシステムによってゲノムに導入したトランスジェニックゼブラフィッシュ系統 Tg[UAS:R53BP1] を構築した.TDP-43 をコードする遺伝子が破壊されたゼブラフィッシュの作製ゼブラフィッシュは,TDP-43 タンパク質をコードする遺伝子を2つ保持している(tarbdp とtardbpl).TDP-43 遺伝子が破壊されたゼブラフィッシュを作製するために,CRISPR-Cas9 法によって,それぞれの遺伝子の N 末端側にフレームシフトを導入した tardbp-n115 と tardbpl-n94 アリールを作製した 1).結果及び考察【脊髄運動ニューロンにおける R53BP1 の発現誘導】DNA 損傷応答のプローブの候補である R53BP1 の発現を脊髄運動ニューロンで誘導するために,運動ニューロンの発生,分化に関わる転写因子をコードする mnr2b 遺伝子座が含まれるゼブラフィッシュの細菌染色体(Bacterial Artificial Chromosome,BAC)を用いた.BAC 内の mnr2b 遺伝子のプロモーター下に改変型 Gal4 転写因子 Gal4FF 2)を挿入した BAC コンストラクトを保持するトランスジェニック系統 Tg[mnr2b-hs:Gal4] を用いた 3).まず,Tg[mnr2b-hs:Gal4] 系統と Tg[UAS:EGFP]系統を交配して,Tg[mnr2b-hs:Gal4] Tg[UAS:EGFP] 二重トランスジェニック系統を取得した.さらに,Tg[mnr2b-hs:Gal4] Tg[UAS:EGFP] 系統と Tg[UAS:R53BP1] 系統と交配して,Tg[mnr2b-hs:Gal4] Tg[UAS:EGFP] Tg[UAS:R53BP1] 三 重 ト ラ ン ス ジ ェ ニ ッ ク 系 統 を 取 得 し た.Tg[mnr2b-hs:Gal4] Tg[UAS:EGFP] Tg[UAS:R53BP1] 仔魚においては,脊髄運動ニューロンの細胞形態が緑蛍光によって可可視化され,さらに,細胞核に存在する R53BP1 が赤色蛍光によって可視化された.Tg[mnr2b-hs:Gal4] Tg[UAS:EGFP] Tg[UAS:R53BP1] 仔 魚 の 脊 髄 運 動 ニ ュ ー ロ ン の 細 胞 核 に は,R53BP1 の局在が観察された.EGFP でラベルされた脊髄運動ニューロンの細胞体の 0.7%(2 cells with a focal RFP dot/268 EGFP-positive cells/3 larvae at 2 dpf)に,R53BP1- 陽性の核シグナルの中に,ドット状の R53BP1 輝点を検出した.今後は,ドット状の R53BP1 輝点とリン酸化 H2AX 抗体での染色パターンを比較し,R53BP1 輝点の DNA 損傷マーカーとしての機能を評価する必要がある.【運動負荷によって生じる運動ニューロンの DNA 損傷の検出系の構築】神経活動に付随して,神経細胞に DNA 損傷が誘発されることが知られている 4).DNA 損傷プローブの候補である R53BP1 を運動ニューロンに発現する Tg[mnr2b:R53BP1] 系統の仔魚を,スターラーの回転によって乱流を起こした飼育バッファー中を長時間にわたって泳がせることで,強い運動負荷を与える実験(Turbulent Swim Test,TST)を行った.TST 後のゼブラフィッシュの脊髄において,神経活動依存的にミクログリアが集積するという先行研究 5) の実験条件に従った.3時間のTST 後の Tg[mnr2b-hs:Gal4] Tg[UAS:EGFP] Tg[UAS:R53BP1] 仔魚において,共焦点顕微鏡を用いたR53BP1 の局在解析を行った.その結果,3時間の TST の前後で,R53BP1 の輝点の頻度を調べたが,有意な差は認められなかった.現在,より長時間の TST 前後の R53BP1 の局在解析を継続している.― 31 ―
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