令和6年度_2024_助成研究報告集
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はじめに低分子医薬品は,高い利便性や低い薬価など様々な理由から有用性が高く,医療への貢献は大きい.新たな低分子医薬品の創出は希求されており,低分子医薬品やそのシード化合物になり得る天然物の効率的な不斉合成法の確立は重要な研究課題である.今回,新規 Lewis/Brønsted 塩基協奏触媒を創製することで,カルボキシ基を求核部位とする新規不斉ハロポリエン環化反応を開発し,医薬品への展開を指向したブロモテルペノイドの効率的かつ網羅的な合成法の開拓を目指した (図 1).また,本研究課題と並行して新規薬理作用機序に基づく創薬ターゲットとして極めて魅力的な V-ATPase 阻害活性を有する化合物群である lobatamide 類 (1) の合成研究を行い,lobatamide A (1a) 及び C (1b) の形式合成を達成した (図 2).主課題である新規 Lewis/Brønsted 塩基協奏触媒による新規不斉ハロポリエン環化反応の開発は,現在,高活性な不斉触媒の効率的な合成法の開発を進めており,今後,合成した不斉触媒を用いて新規ポリエン環化反応を開発する計画である.本報告書では,並行して推進している lobatamide 類 (1) に関する形式合成の研究成果を中心に報告する.濱島 義隆 静岡県立大学薬学部医薬品創製化学分野・教授図 1. 新規 Lewis/Brønsted 塩基協奏作用型触媒とハロポリエン環化図 2. Lobatamide A (1a) 及び C (1b) の化学構造 中原 友樹― 317 ―塩基協奏触媒作用による不斉ハロポリエン環化反応と創薬を指向した応用研究

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