アルブミンとイヌリンの透過に違いがみられ,それらの透過には分子量依存的な差があることが確認できた.この結果は,構築した糸球体模倣デバイスが生体と同様の選択的濾過機能を持つことを示すと考えられる.また,ピューロマイシンアミノヌクレオシドとドキソルビシンによる薬物障害モデルでは,デバイスの濾過機能が低下するとともにアルブミンとイヌリンの濾過選択性もなくなる様子が観察された.この結果は,薬物障害による機能低下をデバイスを用いて表現できた結果であると考えられる.おわりに本研究においては,微細加工技術と細胞培養技術を組み合わせ,生体の濾過機能を模倣するデバイスを開発してその実証をおこなった.デバイスの機能は濾過指標物質の透過を評価することで測定され,生体と同様の濾過選択性や,薬物による機能障害へ反応することを示した.一方で,その濾過機能は生体と同等とまでは至らなかった.これは,用いている細胞の成熟が低いことやデバイス中での培養期間の短さが一因として考えられる.今後は,これらの課題を工学的,生物学的両方の観点から解決へと取り組むことが必要であると思われる.謝 辞このたびは公益財団法人 中外創薬科学財団よりご支援を賜り,心より感謝申し上げます.本奨学金をいただいたことにより,研究活動に専念できる環境が整い,日々の実験や成果の積み重ねに大きな励みとなりました.とりわけ,将来の医療・創薬に貢献するという志を,より一層強く抱く契機となりました.財団の皆様のご支援に深く感謝申し上げますとともに,今後も一層の精進を重ね,研究者として社会に貢献できるよう努めてまいります.引用文献 1. DOI: 10.2215/CJN.08860813, 2014.2. DOI: 10.1038/nprot.2016.098, 2016.3. DOI: 10.1038/s41467-018-07594-z, 2018.― 314 ―
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