令和6年度_2024_助成研究報告集
313/332

はじめにマルファン症候群(Marfan syndrome:MFS)は FBN1 変異を原因とする常染色体顕性遺伝疾患であり,大動脈弁輪拡張症と若年での大動脈解離が生命予後を左右する.トランスフォーミング増殖因子 -β(TGF-β)シグナルの過剰な活性化が MFS の大動脈瘤形成に関与していることが報告され,マウスモデルにおいて抗 TGF-β中和抗体の投与によって大動脈瘤の進展抑制が示されたが,創薬には至っていない 1).本研究では,TGF-βワクチンを開発し,新規治療法を用いた MFS に対する大動脈瘤形成の進展抑制効果を検証し,最終的には創薬につなげたい.実験方法TGF-β1 のうちヒトとマウスで共通する 2 箇所のアミノ酸配列を抗原と認識するペプチドに,担体タンパク質とアジュバントを混合した TGF-βワクチン(A ワクチン,B ワクチンの 2 種類)を作成した.コントロールワクチンはペプチドを含まないワクチンとした.〈実験①〉2 種類のワクチンとコントロールワクチンを,4 週齢の雄 C57BL/6J 野生型(WT)マウスに既報 2)に従い 2 週間おきに計 3 回投与し,各週齢の血清を用いて ELISA により抗体価を測定した.〈実験②〉2 種類のワクチンのうち,抗体価が高いワクチンで,4 週齢の雄 WT マウスならびに MFS モデル(Fbn1C1041G/+)マウスに TGF-βワクチンとコントロールワクチンを既報 2)に従い 2 週間おきに 2 回,その後 1 週間後に計 3 回投与し,10 週齢,16 週齢で大動脈基部と上行大動脈径を心エコーで測定した.16 週齢で Elastica van Gieson (EVG)染色,Alcian blue 染色,Masson Trichrome(MTG)染色を行い,病理組織学的分析を実施した.結果及び考察〈実験①〉A ワクチンでは,ワクチン投与前と比較し投与後 6 週,8 週,12 週で有意な抗体価の上昇を認め,B ワクチンでは,ワクチン投与前と比較し 6 週で有意な抗体価の上昇を認めた.Recombinant TGF-β1 を抗原とした ELISA をワクチン投与後 6 週の血清で施行すると A ワクチンで,有意な抗赤澤 宏 東京大学大学院医学系研究科循環器内科学・講師岡村 駿― 311 ―TGF-βワクチンがマルファン症候群の大動脈瘤形成に与える影響についての検証

元のページ  ../index.html#313

このブックを見る