令和6年度_2024_助成研究報告集
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招聘される研究者 Marcus Conrad受 入 研 究 者(大会長)成果報告鉄依存性の細胞死フェロトーシス(Ferroptosis)のトップランナーとして活躍しているドイツのMarcus Conrad 博士を招聘し,特別講演とシンポジウム講演を行っていただいた.特別講演では,フェロトーシス発見の歴史からその制御機構および創薬へ応用に資する彼の最先端研究成果を紹介していただいた.ここでは質疑応答する時間を十分に設けられなかったことから,同日夕方にフェロトーシスに関する国際シンポジウムを企画し,国内のフェロトーシス研究者の成果発表を交えたディスカッションの場を設けた.1. 招聘の目的と背景フェロトーシスは,近年注目されている鉄依存性の脂質過酸化によって誘導される新しい形式の細胞死であり,神経変性疾患や難治性癌の発症・進展と密接に関連している.Conrad 博士は,このフェロトーシス研究の国際的な先駆者であり,特に GPX4(Glutathione Peroxidase 4)の機能解明とその制御機構に関する研究は,本分野のパラダイムシフトをもたらした.本招聘は,フェロトーシスのシグナル制御に関する最先端研究成果とその薬学的応用展開に関する知見を国内研究者に広く紹介し,神経変性疾患や癌に対する新たな治療戦略創出に向けた学術的・社会的インパクトの創出を目的として実施された.2. 講演概要①特別講演(開催日時:2025 年 3 月 27 日午後,開催場所:メインホール)講演タイトル:Modulating Ferroptosis for Disease Prevention参加者数:300 名程度講演内容:Conrad 博士は,フェロトーシスが神経変性疾患や難治性癌の病因に深く関与しており,その制御を通じた疾患予防の可能性について講演した.特に,GPX4 による脂質過酸化の抑制と,その欠損による非アポトーシス性細胞死の誘導について詳述された.また,FSP1(Ferroptosis Suppressor Protein 1)の同定とその NAD(P)H 依存的な CoQ10 還元活性を介したフェロトーシス抑制機構,さらにビタミン K サイクルとの関連についても紹介された.近年開発された FSP1 阻害剤(icFSP1)は,がん細胞において FSP1 の相分離を誘導し細胞死を引き起こすことから,新規抗癌剤Institute of Metabolism and Cell Death, Molecular Targetsand Therapeutics Center, Helmholtz Munich九州大学大学院薬学研究院・教授大嶋 孝志― 305 ―日本薬学会第 145 年会(福岡)(2025 年 3 月 26 日 ~ 3 月 29 日)

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