NEURO2024 Turrigiano 教授によるプレナリー講演の様子的な可塑性は覚醒時に起こり,開眼により誘導される下向きの恒常性可塑性は睡眠時に起こることが明らかになりました.また,自閉症スペクトラム障害のげっ歯類モデルでは,この恒常的な補正機能が損なわれていることが示されました.最後に,これらの恒常性活動セットポイントは柔軟であり,学習中にリセットされるという仮説を探る,最新の研究の紹介がありました.視覚に依存した獲物捕獲の学習パラダイムが,視覚系の臨界期において,一次視覚野のニューロンの活動セットポイントを劇的に変化させるという斬新な発見をされました.これらの知見を総合すると,いくつかの神経疾患において恒常性可塑性が失われた脳では,発達や学習によって引き起こされる正常範囲内の回路活動変化を補正できなくなる可能性が示唆されて,基礎から臨床まで幅広く,多くの研究者の興味をそそるエキサイティングな講演となりました.今回,貴財団からご支援いただけましたことで,本学会において Turrigiano 教授を迎えて直々に講演を拝聴する機会を得たことは,我が国における神経科学の研究に有益であったと考えております.講演はオンラインではありましたが,素晴らしい内容でかつわかりやすく,若手からシニアまで多くの研究者を刺激したというフィードバックを受けております.このタイミングで Turrigiano 教授を迎えられたことは,日本における神経科学の活性化において,きわめて効果的であったと喜ばしく感じております. この度のご支援に改めて感謝の意を申し上げます.― 296 ―
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