令和6年度_2024_助成研究報告集
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招聘される研究者 Gina Gabrielle Turrigiano受 入 研 究 者(大会長)成果報告2024 年 7 月 24 日から 27 日までの 4 日間,福岡コンベンションセンター(福岡国際会議場,マリンメッセ福岡 B 館)にて NEURO2024 が開催されました.本大会では公益財団法人 中外創薬科学財団からのご支援により,Brandeis University 教授のGina Gabrielle Turrigiano 博士を招聘し,「Plasticity and Stability in Visual Cortical Circuits During Experience-dependent Plasticity」をテーマにプレナリーレクチャーを 7 月 24 日(水)に開催いたしました.当初は現地でのご講演を予定しておりましたが,諸事情により,急遽オンライン講演となりました.しかしながら,講演会場には 750 名もの参加者が Turrigiano 博士の講演を聴講され,大盛況の講演となりました.Turrigiano 教授の講演内容は,「経験に依存した可塑性における視覚皮質回路の可塑性と安定性」というタイトルで,Turrigiano 教授のグループが先導してきた神経回路恒常性維持に関わる研究のその発端から最新の研究までをご紹介いただきました.以下にその要旨をご報告いたします.私たちの脳は,学習や経験によって引き起こされる既存の機能の劇的な変化や可塑性に伴う新たな回路形成にもかかわらず,何十年にもわたって安定した活動パターンを生成し,維持します.その経験依存的な可塑性と安定性の保持という対極的な現象に対して,私たちの脳が実際どのようにバランスをとっているのかを解くのは大きな課題です.過去 20 年の間に,Turrigiano 教授のグループは,「恒常的」な負のフィードバックである可塑性のメカニズムを明らかにしてきました.この恒常性可塑性メカニズムは,脳活動全体を安定させる一方で,経験によって特定された神経回路の再構成を可能にすると理論づけられています.本講演では,げっ歯類を使い,自由に行動する動物の視覚野における個々の新皮質ニューロンが,それぞれの活動に最適とみなされる恒常性活動セットポイントを持っていて,環境変化に直面してもその活動セットポイントである発火頻度に戻り,それを維持することを示されました.さらには,この発火頻度の恒常性は,恒常性制御の方向性に依存した形で,睡眠・覚醒状態によって調節されることが見出されています.すなわち,閉眼により誘導される上向きの恒常Brandeis University東京大学大学院医学系研究科神経細胞生物学分野岡部研究室・教授岡部 繁男― 295 ―第 47 回日本神経科学大会 第 67 回日本神経化学会大会 第 46 回日本生物学的精神医学会年会第 8 回アジアオセアニア神経科学連合コングレス(2024 年 7 月 24 日 ~ 7 月 27 日)

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