令和6年度_2024_助成研究報告集
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図2.増感 FISH 法を用いた GAD2/PCBP3 の遺伝子発現解析モセット胚に導入し,疾患モデルを樹立.全身感染型 AAV を用いて Th-INs を標的とした治療介入実験を行った.結果及び考察視床は,摂食や睡眠等の本能行動,また感覚器から大脳皮質への入力を介在・調整する重要な脳幹領域である.近年,霊長類と齧歯類には視床の神経細胞構成に大きな進化的種差があることが示され,具体的には抑制性神経細胞の割合・分布の大きな差が明らかにされてきた.実際に,これまでに行ったマウスおよび小型霊長類マーモセットの視床におけるシングルセル RNA-seq 解析においては,霊長類特異的な細胞種の存在が示唆された ( 図 1).この細胞群は抑制性神経細胞マーカー (GAD1, GAD2) を強く発現するものの,従来の抑制性神経細胞サブタイプマーカー (PV, SST, NPY, CCK) 等の発現はいずれも弱いものの,PCBP3 や CHRM2 という齧歯類では見られない特徴的な遺伝子発現を示していることが分かった ( 図2).さらに,マーモセット脳の RNA-FISH 解析によって,これらの PCBP3+CHRM2+GAD1+GAD2+ 神経細胞はマーモセット脳の視床に現局していることが分かった( 図2).更にヒトにおいても,胎児脳および成体脳において同様の神経細胞種が存在することが近年明らかとなった 1-3).これら,新たに発見した霊長類特異的な視床抑制性神経細胞を Th-INs と名付け,以下のような解析を行った.図1.マウス・マーモセット脳の視床における Single-nucleusRNA-seq 解析(神経細胞のみを抽出)― 283 ―

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