を有する基質においても58-99%の高い放射化学的収率(RCY, Radio Chemical Yield)で211At標識化体が得られた.特に,臨床応用を視野に入れた際に問題となりうる遷移金属を使用することなく,医薬骨格に見られる含窒素複素間骨格に対し,原料の電子状態によらず高い位置選択性と良好な放射化学収率で211At標識化できる汎用性の高い手法と言える3).図1.液相法によるヨードニウムイリドを用いた211At標識化<固相担持ヨードニウムイリドの開発と固相法による211At標識>次にヨードニウムイリドを固相担持することで,固相法での211At標識化を行うことを目指し,固相担持試薬の開発に取り組んだ.合成化学的な観点からの基礎研究として,樹脂の種類,樹脂のサイズと粒子形,樹脂へのヨードニウムイリドの担持量,樹脂へ担持する際のリンカー長,反応溶媒(極性の違い),反応温度,加熱方式,標識反応時間,樹脂の使用量,副反応を抑制するための添加剤(還元剤やラジカル捕捉剤)について網羅的な検討を実施した.・樹脂の材質:極低濃度での化学種の反応となる放射標識反応においては,樹脂の種類が反応溶媒同様に局所空間の極性等に影響を及ぼすと考え,ポリスチレン樹脂(PS樹脂),ポリスチレン樹脂に親水性のポリエチレングリコール部を有する樹脂2種(PEG-co-PS樹脂及びTentagel樹脂),アクリルアミド-ポリエチレングリコール樹脂(PEGA樹脂),及び,ポリエチレングリコール樹脂(ChemMatrix樹脂)を利用した固相担持ヨードニウムイリドを合成した.初期モデルとして,キノリン骨格をヨードニウムイリドとして導入した各種樹脂を利用し,固相バッチ法で同一条件(DMF, 100℃,30分)にて標識効率を比較した.図2に示すように,ポリスチレン樹脂(PS樹脂)が39%の標識率で目的物を与えたことから最適であると判断した.当初,アスタチンアニオン種が樹脂内部に侵入しやすい親水性樹脂が良いのではないかと考えて各種樹脂を検討したが,想定とは逆の結果が得られた.親水性樹脂では,ヨードニウムイリドの導入段階における効率が低く,担持量の低さが原因の一つとなったと考えている.― 21 ―
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