とがモノアミンバランスの不均衡を引き起こし，老化に伴う睡眠異常の発症に関与している可能性が考えられる．今後，モノアミン A を産生している神経細胞群や下流の神経回路が，老化によりどのように変化しているのかを明らかにすることで，老化に伴う睡眠異常の発症メカニズムの解明を目指す．おわりに睡眠が，生命活動を維持するためにも大変重要な機能であることは知られているが，高齢者を対象とした疫学研究が中心であったため，老化による睡眠変容の生理的意義は未解明である．さらに，老化に伴う睡眠不足は，中枢神経系の遺伝子発現の変化に影響を与え 9)，全身性の慢性炎症反応を加速させる 10)．本研究提案を通して，加齢による神経細胞特性の変化が，睡眠変容を引き起こし，さらには全身の慢性炎症に影響を及ぼしているということを明らかにできる．老化による神経細胞数の減少や遺伝子発現の変化が神経活動を変化させ，睡眠・覚醒制御機構の変調を引き起こしていることを解明できることが期待される．老化による睡眠・覚醒制御機構の変調を特定の神経細胞集団の変化によることを証明できれば，その神経細胞集団や下流の脳領域の活動変化や，全身の体内環境を整えている炎症物質を調べることでマウスやヒトの睡眠障害を検出することが可能となる．重症の睡眠障害は，加齢性疾患の罹患率や健康寿命の低迷に関係するため，これらの症状の治療は年齢に関係なく重要であり，本研究提案を遂行することによって新たな治療法や予防法を提案されることが期待される．謝 辞この研究は，公益財団法人 中外創薬科学財団 令和 5 年（2023 年）度 特別研究助成金 SRG2023 (Special Research Grant 2023) の助成金交付により研究が遂行されたものです．この場を借りて深く御礼申し上げます．また，京都大学大学院薬学研究科システムバイオロジー分野の皆様には，温かいご指導ご鞭撻を賜りました．心より感謝申し上げます．引用文献1. Hasegawa E, Miyasaka A, Sakurai K, Cherasse Y, Li Y, Sakurai T: Rapid eye movement sleep is initiated by basolateral amygdala dopamine signaling in mice. Science, 375, 994-1000 (2022).2. Nicotra A, Pierucci F, Parvez H, Senatori O: Monoamine oxidase expression during development and aging. Neurotoxicology, 25(1-2):155-65 (2004).3. Saper CB, Fuller PM, Pedersen NP, Lu J, Scammell TE: Sleep state switching. Neuron, 68(6):1023-42 (2010).4. Chan-Palay V, Asan E: Quantitation of catecholamine neurons in the locus coeruleus in human brains of normal young and older adults and in depression. J Comp Neurol, 287(3):357-72 (1989).5. McGeer PL, McGeer EG, Hattori T: Dopamine-acetylcholine-GABA neuronal linkages in the extrapyramidal and limbic systems. Adv Biochem Psychopharmacol, 16:397-402 (1977).6. Klöppel S, Kovacs GG, Voigtländer T, Wanschitz J, Flicker H, Hainfellner JA, Guentchev M, Budka H: Serotonergic nuclei of the raphe are not affected in human ageing. Neuroreport, 12(4):669-71 (2001).7. Ishunina TA, van Heerikhuize JJ, Ravid R, Swaab DF: Estrogen receptors and metabolic activity in the human tuberomamillary nucleus: changes in relation to sex, aging and Alzheimer’s disease. Brain Res, 988(1-2):84-96 (2003).― 224 ―
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