令和6年度_2024_助成研究報告集
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着目して生理機能の解明をおこなった.網膜については,まず,遺伝子欠損マウスの網膜構成細胞を免疫蛍光染色により調べた.また,視細胞シナプスの分布も免疫蛍光染色により観察した.続いて,網膜を構成する 4 つの層の厚みやその細胞数を測定した.肝臓については,高脂肪食負荷による影響を観察した.組織構造及び,トリアシルグリセロールの蓄積を評価した.続いて RNA-seq により肝臓における変動遺伝子を網羅的に探索し,細菌型 PLC 様タンパク質が肝臓で欠損した際に起きる異常について詳細な解析を試みた.結果及び考察細菌型 PLC 様タンパク質は細胞外小胞 (EV) により放出される細菌型 PLC 様タンパク質の細胞外への分泌経路を解明するために,典型的な小胞体 - ゴルジ体を介した経路の検証を行った.小胞体 - ゴルジ体経路の阻害剤処理の有無に関わらず細菌型 PLC 様タンパク質過剰発現細胞における細菌型 PLC 様タンパク質の細胞外分泌量に変化は見られなかった.そこで,細胞外分泌経路探索の手がかりを得るために,細胞内局在の解析を行った.タグをつけた細菌型 PLC 様タンパク質を安定発現させた細胞において細菌型 PLC 様タンパク質が後期エンドソームマーカーやリソソームマーカーと共局在する様子が観察された.後期エンドソームは細胞外小胞 (EV) 形成に関わるオルガネラであることから,我々は細菌型 PLC 様タンパク質が EV を介して分泌される可能性を検証した.EV 形成阻害剤処理を行うと,細菌型 PLC 様タンパク質の細胞外分泌は抑制され,細菌型 PLC 様タンパク質の分泌は EV 形成と関与していることが判明した.また超遠心法を用いて,超遠心前の培養上清(Control),超遠心後の培養上清(EV removal),低速遠心で沈殿する EV(large EV),高速遠心で沈殿する EV(small EV)の各画分について,細菌型 PLC 様タンパク質の存在量を調べた.その結果,EV 画分に細菌型 PLC 様タンパク質が濃縮され,細菌型 PLC 様タンパク質が EV を介して分泌されることが明らかとなった.加えて,細菌型 PLC 様タンパク質の過剰発現により,EV の産生が促進されることもわかった.EV の産生を促進することから,細菌型PLC 様タンパク質が細胞内のタンパク質を EV に内包させ,細胞外へ排出している可能性を検討した.通常分泌されない GFP タンパク質を細胞内に過剰発現し,同時に細菌型 PLC 様タンパク質及びその変異体を発現させた際の GFP タンパク質の分泌を調べたところ,細菌型 PLC 様タンパク質と同時に発現させた際のみ GFP が EV 画分に濃縮されていることが確認できた.これらの結果より,細菌型 PLC 様タンパク質は EV の産生を促進することで細胞内タンパク質を細胞外へ排出し,その結果,自身も細胞外へと分泌されている可能性が判明した.細菌型 PLC 様タンパク質は非典型的な PLC である細菌型 PLC 様タンパク質の基質候補となるホスホイノシタイドを特定するために,細菌型 PLC 様タンパク質及びその活性変異体を一過性発現させた HEK293 細胞において,ホスホイノシタイドの各分子種の量にどのような変化が見られるのか,東京科学大学の佐々木雄彦教授の協力のもと,ホスホイノシタイド包括測定法により検討した.その結果,活性変異体を発現させた際と比較して細菌型 PLC 様タンパク質発現細胞では一般的な PLC が基質とする PIP2 に加えて,いくつかのホスホイノシタイドの量が減少した.これらの結果は,細菌型 PLC 様タンパク質が細胞内でなんらかのホスホイノシタイドを代謝していることを示唆している.しかしながら,ホスホイノシタイドはリン酸化― 217 ―

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