実験方法本研究では,ゲノム編集技術の CRISPR-Cas9 システムと生殖発生工学技術を用いて遺伝子組換えマウスの機能解析を行った.具体的には,自然交配による生殖能力試験,精巣・精子の形態観察(電子顕微鏡観察),精子の運動性解析,体外受精試験(卵丘細胞や透明帯の除去処理を含む),生殖細胞の蛍光免疫染色観察,蛍光タンパク質をコードしたノックインマウス開発,そして関連タンパク質のウエスタンブロット解析を行った.マテリアル等の詳細や各種解析の諸条件は,引用文献を参照してください.図 1. PDCL2-KO マウス解析図 2. DEC-Tec 技術を用いた小分子化合物スクリーニング結果及び考察上記の通り,ゲノム編集マウスを用いた表現型スクリーニングの結果,小胞体に局在する PDCL2が精巣内で起こる精子形成の中でも精子先体形成に必須の役割を持ち,特異的に結合する小分子化合物を DNA-encoded Chemistry Technology (DEC-Tec) を用いたスクリーニングにより発見した(図1, 2)5, 6).また近年,魚類卵子特異的に発現する GPI アンカータンパク質 Bouncer が異種間受精を防ぐレセプターとして機能することが明らかになった 7).哺乳類では精巣特異的遺伝子として保存されるBouncer/SPACA4 は,精子 GPI アンカータンパク質として透明帯通過に機能することを発見した 4).― 204 ―PDCL2 が精子形成に必須であることを発見した 1).精子形成の場である精巣で特異的に発現するPDCL2 は精子頭部の形成,特に先体顆粒合成に機能することを明らかにした.この表現型は男性不妊症の巨大円形精子症の疾患モデルとして有用.ヒト PDCL2 特異的に結合する小分子化合物二種類の同定に成功した 2).
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