令和6年度_2024_助成研究報告集
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ーゼによる試験管内転写反応によって調製される.一般な試験管内転写反応では,全長 RNA の転写効率の低さ,二本鎖 RNA などの副産物の生成が問題になっている 1).さらに 5’-Cap などの医薬品として必須な化学構造を導入するため,転写反応基質(NTP)と核酸アナログ共存条件で試験管内転写反応を行う方法が報告されている.この方法はキャッピング酵素による転写後付加反応を利用する方法と比較して簡便であるが,核酸アナログの導入効率が低いために高価な核酸アナログを大量に必要とする点,さらに NTP とアナログが競合するために非 Cap 化 RNA も合成されてしまうという欠点がある.非 Cap 化 mRNA の 5’ 末端は三リン酸となり,免疫原性を持ってしまう.そのため純度の高い Cap 化 mRNA を合成するために多段階の反応と精製が必要になり,製造コストの増大や製造ロット間での純度差が問題となる.本研究では RNA 医薬品の製造に応用することを目指し,転写活性・核酸アナログ導入効率が向上した RNA ポリメラーゼをマイクロ流路と無細胞翻訳系を組み合わせた分子進化工学手法によって創成することを目的とした.実験方法Water-in-oil droplet の調製オンチップバイオテクノロジーズ社,on-chip generator, 2D-Chip-800DG, フッ素系オイルを用いて,無細胞翻訳系を含む直径約 25 μ m の water-in-oil droplet を調製した.調製した droplet は 37℃で18 時間インキュベーションし,タンパク質を droplet 内で発現した.Water-in-oil droplet の選別オンチップバイオテクノロジーズ社,on-chip sort, 2D Chip-Z1001, フッ素系オイルを用いて,直径約 25 μ m の緑色蛍光強度が上位の water-in-oil droplet を選別した.選別した droplet を破砕後,PCR によって DNA を増幅した.進化した RNA ポリメラーゼの配列解析・活性評価Droplet から回収した DNA をベクターにクローニングし,DNA をサンガーシーケンスによって配列解析した.配列を解析した DNA それぞれを無細胞翻訳系,レポーター遺伝子(GFP)とチューブ内で混合し,発現した GFP の蛍光強度をプレートリーダーで測定した.結果及び考察マイクロ流路デバイス技術・無細胞翻訳系の発展により,直径 25 μ m 程度の water-in-oil dropletに無細胞翻訳系を封入し,droplet 内でタンパク質を発現することが可能になった 2, 3).RNA ポリメラーゼをコードした DNA と GFP をコードしたレポーター遺伝子,無細胞翻訳系を混合し,マイクロ流路デバイスを用いて water-in-oil droplet を作成した.Droplet 内で,RNA ポリメラーゼが発現し,レポーター遺伝子から GFP が発現することで,緑色蛍光強度によって RNA ポリメラーゼの活性を評価することが可能である(図 1).緑色蛍光を発する Droplet をソーターによって選別することで,高い活性を持つ RNA ポリメラーゼの配列をコードした DNA を回収することが可能になる.回収した DNA を PCR で増幅し,再び無細胞翻訳系とレポーター遺伝子と混合して water-in-oil droplet に封入した.この一連のプロセスを繰り返すことで,数百万種類の配列ライブラリーから,活性が向上― 201 ―

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