ER 陽性乳がん細胞においてロイシンは細胞増殖だけではなくタモキシフェン耐性獲得にも重要であることが明らかになったことから,次に ER 陽性乳がん細胞におけるロイシンの代謝経路の同定を試みた.炭素原子と窒素原子を同位体標識したロイシンを ER 陽性乳がん細胞に取り込ませ,24 時間後にメタボローム解析を行い,ロイシン由来の炭素原子,窒素原子が取り込まれた分子の同定を行った.メタボローム解析の結果により興味深いことに,ロイシンは代謝物 X に代謝されていることがわかった(データ非公開).そこで,ロイシン依存的細胞増殖において代謝物 X の重要性を調べたところ,ロイシン依存的細胞増殖には代謝物 X に加えてグルタミンが必要であることがわかった(図6).図 6.ロイシン依存的細胞増殖における代謝物 X とグルタミンの必要性がん細胞の増殖にグルタミンは非常に重要であることが知られている.しかしながら,がん細胞の細胞増殖におけるグルタミン依存性は全てのがんに認められる訳ではなく特定のがん種に依存して見られることが知られている.そこで,乳がん細胞におけるグルタミン依存性を様々な乳がん細胞株を用いて調べたところ,乳がん細胞内でも細胞増殖におけるグルタミン依存性が異なることがわかった(図 7).図 7.乳がん細胞のロイシン依存的細胞増殖におけるグルタミン依存性― 197 ―
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