令和6年度_2024_助成研究報告集
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図 3.ウイルス由来タンパク質発現による T 細胞表面の HLA 発現抑制.左記3種類の検討では,ICP47 の導入により顕著な HLA 発現抑制効果が得られた.HLA 欠失に伴う NK 細胞からの認識・攻撃を回避する目的で,HLA-E の過剰発現を行う方法などが考案されており,基礎研究段階では有望な結果が示されているが,生体内での効果は未検証である(図 4)7).図 4.HLA-E 遺伝子の導入.B2M 遺伝子,及びロードされるペプチド鎖を全てリンカーで接続して遺伝子導入することで,効率良く細胞表面に発現した.HLA-E は,抑制性受容体 CD94/NKG2A ヘテロ二量体に対するリガンドとして,NK 細胞のエフェクター活性を減弱させる.しかし逆に,活性化受容体 CD94/NKG2C に対するリガンドとして,NK細胞からの攻撃を強める方向にも働きうる.そこで末梢血 NK 細胞における NKG2A/2C の発現割合がドナーごとに大きく異なり,HLA 欠損細胞において HLA-E の発現が抑制性・活性化のいずれに働くかは,NK 細胞の NKG2A/2C の発現割合により異なることがわかった(図 5,図 6).NKG2Aが低発現のドナーでは,HLA-E 発現はむしろ NK 細胞のエフェクター活性を高めてしまうことから,HLA-E を過剰発現させる従来のアプローチは普遍的には適用できないことが示された.その他にもNK 細胞の活性化リガンドとして知られる DNAM-1 はやはり抑制性受容体 TIGIT のリガンドでもあるなど,画一的に NK 細胞の活性化・抑制を制御する方法については再検討を要することが示唆される.次に,ドナー T 細胞からの T 細胞の応答を抑制するために,T 細胞受容体の発現を低下させる方法について検討した.これについても様々な分子が知られているが,ここでは TCR/CD3 複合体のエンドサイトーシスを促進することでその発現レベルを低下させることが知られているタンパク質 A,B を検討した.CAR-T 細胞に同タンパク質を発現させ,特にタンパク質 A が TCR/CD3 発現を顕著― 188 ―

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