図 2.免疫逃避に関わるウイルス由来タンパク質(図中の分子は例)の発現により,アロ免疫反応を抑制できる可能性がある.実験方法ヒ ト T 細 胞 は, 末 梢 血 単 核 球 を 抗 CD3 抗 体 に よ り 刺 激 し て 用 い た. 抗 CD3 抗 体 ( ク ロ ー ンOKT3) の単鎖可変領域フラグメントを CD8a 分子の膜貫通・細胞内ドメインと連結して HLA 陰性の白血病細胞株 K562 の細胞表面に発現させ,同時に共刺激分子 CD80 を導入することにより作製したK562-OKT3/80 と共培養することにより行った 5).細胞培養は RPMI1640, 10% fetal bovine serum にサイトカイン IL-2 を 100 IU/ml,IL-15 を 10 ng/ml で添加して行った.CD19 に対する CAR 遺伝子は,クローン FMC63 由来の単鎖可変領域フラグメントに CD28, CD3z の細胞内ドメインを連結した第二世代 CAR を用いた.レトロウイルスプラスミド pMX に遺伝子を挿入して,PG13 パッケージング細胞に安定導入した上でウイルス液を産生させた.その他の遺伝子を発現させる際は,同一プラスミド内で P2A 配列により遺伝子を連結させることで導入した.レトロウイルスベクター導入は T 細胞刺激後に,レトロネクチン(タカラバイオ)を用いて行った.CRISPR/Cas9 による遺伝子ノックアウトは,Cas9 タンパク質と in vitro 合成ガイド RNA を混合して 37℃で 5 分間静置することで RNP 複合体を合成し,NEPA21 ( ネッパジーン ) を用いた電気穿孔法により T 細胞に導入した.ガイド RNA は以前に確立した配列を標的とした 6).T 細胞の表面抗原及び CD107a 発現の解析はフローサイトメトリー (CantoII, BD Biosciences) により行った.細胞傷害活性は,標的細胞に EGFP 遺伝子を搭載しておき,共培養後に生き残る標的細胞をフローサイトメトリーによりカウントした.T 細胞と共培養を行っていない群をコントロールとして,これとの割合を計算することで,生細胞率を計算した.NK 細胞は,末梢血単核球から CD56 陽性細胞を磁気ビーズにより単離した後,K562 に膜型 IL-21と 4-1BBL を共発現させた細胞により刺激を加えて培養・増殖させた.サイトカインは IL-2, IL-15 を添加した.結果及び考察ウイルス由来の代表的な TAP 阻害タンパク質(UL49.5,US6,ICP47)を遺伝子レベルで CAR-T細胞に導入したところ,様々な程度で実際に T 細胞上の HLA 発現が阻害されることを確認した(図3).最も抑制効果の高い ICP47 を以後の検討に用いることとした.― 187 ―
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