と比較して,0.91°の歪みを示すことである.分子の疎水性は,エステル部分のアルキル鎖を変更することで調節可能である.さらに,1 位および 7 位にアミノ基を有するアリール基を導入することで,pKa の調整が可能となり,また,追加の立体障害を与えてπ – π相互作用を防ぐ効果も期待される.実際,同様の位置に臭素原子を有するペリレンジイミドも,構造に歪みを導入することが知られている.図 1c に示すようなペリレン誘導体の合成を行った.先行研究に従い,化合物 1A はグラムスケールで合成した.アミノ基を含む複数のアリールボロン酸エステル(2a–2h)との鈴木 – 宮浦クロスカップリング反応と脱保護反応を経て,さまざまな pKa 値を持つ分子ライブラリー(3Aa–3Ah)を構築した.疎水性を調節するために,3, 4, 9, 10 位の側鎖を誘導化した.1A にトリフルオロメタンスルホン酸を作用させ,対応する酸無水物を生成した.この無水物をアルコールおよび対応するアルキルハライドと塩基条件下で反応させ,対応するアルキル基を 3, 4, 9, 10 位に有する化合物 1B–1D を得た.次に,1B–1D と 2e の鈴木 – 宮浦クロスカップリング反応および脱保護反応を行い,疎水性が異なる分子ライブラリー(3Be,3Ce,3De)を構築した.合成した分子ナノカーボン類をバッファー条件下でルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて核酸送達効率を評価した.結果及び考察合成した分子ナノカーボン類をバッファー条件下でルシフェラーゼレポーターアッセイを用いて核酸送達効率を評価したところ,HEPES バッファー pH 7.0 が最も高い送達効率を示した.次に,合成した分子の核酸送達効率および毒性を評価した(図 2a).合成分子と NanoLuc® をコードしたプラスミド DNA を HEPES バッファー(pH 7.0)に溶解し,これらを混合後 30 分間インキュベートして複合体形成を促進した.この際,R 値(分子内の末端アミノ基数と核酸のリン酸基数の比)として 2,5,10,20 を試験した.形成された複合体を HEK293T 細胞に導入し,ルシフェラーゼ活性と細胞生存率(MTT アッセイ)を測定した.ルシフェラーゼ活性のデータはヒートマップで示す(図 3b).この中で,細胞生存率が 70% 未満の条件は青色で表示した.二級アミンを有する KTU207,および化合物 1 と 5 は高い送達活性を示した.一方,同様に二級アミンを含む化合物 6 は,環構造の歪みによる低い pKa のため,低い送達効率を示したと考えられる.また,さまざまな側鎖を有する二級アミン誘導体である化合物 8 〜 10 は,非常に低い送達効率を示し,脂溶性が核酸送達に大きく関与することが示唆された.― 15 ―
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