scRNAseq による腫瘍起原細胞の同定本モデルの特徴を詳細に調べるために,scRNAseq 解析による解析を行った.野生型と TP53 欠損型の移植物を用いて解析を行った結果,細胞は腫瘍,軟骨,軟骨膜の 3 つのクラスターに分類され,腫瘍と軟骨からなるクラスターは軟骨膜から形成される可能性が見出された(図 4).図 4. ヒト肢芽間葉系細胞由来 in vivo ユーイング肉腫モデルの scRNAseq 解析考察ユーイング肉腫の約 8 割は骨組織で発症し,四肢骨格での発症は約 4 割である 5).長骨での発症部位としては約 5 割が骨幹部であり,臨床所見としては COL1A1 陽性な軟骨膜細胞を起原とする骨膜から発症している可能性が高い.我々の腫瘍モデルは軟骨膜,つまり骨膜の起原細胞を発症源とするものであることから,腫瘍の発症という観点からも臨床像を反映しているモデルであると考えられる.おわりに本腫瘍モデルの有用性が示されたことから,scRNAseq 解析で同定された腫瘍組織特異的に高発現している lncRNA を標的とした gRNA を複数設計し,ドキシサイクリン依存的 dCas13 発現誘導系を導入したヒトユーイング肉腫株 A673 を用いて gRNA スクリーニングを実施した.その結果20種類の gRNA が標的候補として同定され,現在,これらの gRNA のバリデーションならびに標的分子の探索を行っている.謝辞本研究計画を採択していただきました公益財団法人 中外創薬科学財団に深く感謝いたします.― 167 ―図 2 で示した 4 群のサンプルを scRNAseq によって解析した結果,腫瘍クラスター,軟骨クラスター,軟骨膜クラスターの 3 つに分類され,腫瘍クラスターは軟骨膜クラスターを起点として形成されることも見出された.
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