令和6年度_2024_助成研究報告集
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― 164 ― ユーイング肉腫患者の約 1 割は TP53 の変異を有しており,さらに同遺伝子の変異を有する場合の 8 割では EWS/FLI1 融合遺伝子が確認されている 4).3 次元軟骨誘導(3DCI)培養条件下において,骨原基形成能を有するヒト多能性幹細胞由来肢芽様間葉系細胞(ExpLBM)を誘導する技術を開発することに我々は成功しており 2),TP53 機能欠損型の同組織体を NOD-SCID マウスの皮下に移植した後,EWS/FLI1 の発現誘導を行うと腫瘍が形成されることを予備データとして有していた.研究助成採択後は,開発途中である肉腫モデルの臨床検体との類似性,そして腫瘍細胞の起原細胞の同定に焦点を当てて研究を実施した.実験方法1.TP53 欠損ヒト iPS 細胞株の樹立Addgene より入手した pX459 ベクターに TP53 に対する gRNA 配列(CGTCCGCGCCATGGCCATCT)を組み込んだ後,NEPA21(ニッパジーン)を用いたエレクトロポレーションにてヒト iPS 細胞株414C2 に導入した.プラスミド導入後に 1µg/ml のピューロマイシン処理を 3 日間行うことでプラスミドが導入された細胞を選別し,次に 10µM Nutlin3a で 3 日間処理を行うことで TP53 の機能欠損が生じた細胞の選別を行った.その後,シングルコロニーピックアップを行い,0.1µM のドキソルビシン処理によって P21 の発現誘導が生じないクローンを選別した.2.ドキシサイクリン誘導的 3xFLAG-EWS-FLI1 発現系の構築Addgene より入手した piggyBAC 発現ベクターである PB-TAC-ERP2 に ThermoFisher にて人工遺伝子合成した pDONR221-3xFLAG-EWS-FLI1 を LR 反応にて導入した.その後,エレクトロポレーションにて 414C2(野生型)あるいは 414C2 TP53KO 株に PB-TAC-ERP2-3xFLAG-EWS-FLI1 を導入し,1µg/ml のピューロマイシン処理を 3 日間行うことでドキシサイクリン誘導的に 3xFLAG-EWS-FLI1 の発現が可能な細胞株を樹立した.3.ExpLBM の誘導と ExpLBM 由来軟骨オルガノイドの作成ExpLBM ならびに ExpLBM 由来軟骨オルガノイドに関しては,以前に我々が報告した論文に記載されている手法を用いて誘導を行った 2).414C2(野生型)/ PB-TAC-ERP2-3xFLAG-EWS-FLI1 ならびに 414C2 TP53KO/ PB-TAC-ERP2-3xFLAG-EWS-FLI1 株を原始線条,側板中胚葉,肢芽間葉系細胞へと分化誘導した後,肢芽間葉系細胞の継続継代を行うことで 414C2(野生型)/ PB-TAC-ERP2-3xFLAG-EWS-FLI1 ならびに 414C2 TP53KO/ PB-TAC-ERP2-3xFLAG-EWS-FLI1 由来 ExpLBM を樹立した.4.NOD-SCID マウスへの ExpLBM 由来軟骨オルガノイドの皮下移植実験CharlevsRiver より購入した NOD-SCID マウス(4 週齢 , 雌)にイソフルランの吸入麻酔を行った後,側腹部の切開し ExpLBM 由来軟骨オルガノイドを移植した後に切開部位を縫合した.その後,0.1mg/mlドキシサイクリンと 1%スクロースの飲水投与を行い,投与開始 3 ヶ月目に頸椎脱臼によって NOD-SCID マウスを安楽死させた.摘出した組織は 4%PFA にて固定し,パラフィン包埋後に組織切片を作成し組織学的解析および VISUM による解析を行った.scRNAseq 解析は 10x Genomics 社の

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