令和6年度_2024_助成研究報告集
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実験方法核酸輸送において,カチオン性担体は通常,静電的相互作用を通じて核酸と複合体を形成し,エンドサイトーシスなどのプロセスを介して細胞内への取り込みを促進する(図 1a).細胞内に取り込まれた後,これらの複合体は解離し,核酸が細胞質へと放出される.このプロセスを制御する上で重要なパラメータには,担体分子の疎水性および電荷(pKa)が含まれ,これらは核酸との結合親和性や複合体の膜透過性に影響を与える.そのため,これらの物理的特性を精密に制御することが,効果的な送達システムの設計において不可欠である.さらに,分子ナノカーボンは強いπ – π相互作用による凝集を起こしやすい.この問題を緩和するためには,構造の歪みやかさ高い置換基の導入が必要となり,分子間相互作用を低減し,溶解性を改善することができる.図 1 分子設計と合成我々は,重要な物理的特性を精密に制御するために,疎水性および pKa の調節が可能な 1,7- ジアリールペリレン -3,4,9,10- テトラエステルを設計した(図 1b).3,4 位および 9,10 位にエステル基を導入することで,ペリレン骨格に歪みが生じ,分子間のπ – π相互作用が抑制されると期待される.注目すべきは,このペリレンテトラエステルは,広く生物学的応用に用いられているペリレンジイミド― 14 ―a. 化学的手法による核酸輸送の代表的なメカニズム , b. ペリレン誘導体の分子設計 , c. ペリレン誘導体の合成経路

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