令和6年度_2024_助成研究報告集
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図 3. 医師手動治験検体を用いた解析考察ウイルス製剤を用いた免疫療法は強い抗腫瘍免疫を誘導するが,腫瘍微小環境における詳細な機序は解明されておらず,ウイルス製剤の臨床実装において重要な課題である.今回,Ad-REIC 製剤を用いた解析により,Ad-REIC 製剤は腫瘍細胞への直接的な効果として腫瘍細胞のアポトーシス誘導および小胞体ストレスによる immunogenic cell death を引き起こすこと,さらに間接的な効果として免疫細胞誘導を介して抗腫瘍免疫の活性化を引き起こすことを証明した.また,膠芽腫に対する既存薬であるベバシズマブとの併用により,治療効果が増強されることも示した.現在までに,膠芽腫に対するウイルス製剤の治療効果とそのバイオマーカーの関連についてはほとんど報告されていない.また,ウイルス製剤を含む免疫療法後の longitudinal sampling による腫瘍微小環境解析の重要性が提唱されているが 8),技術的な難易度も高く,実施には困難を伴う.一方,本研究で得られた Ad-REIC 製剤による腫瘍微小環境の再構築について,ヒト検体での検証は重要な課題である.我々は,第Ⅰ / Ⅱ a 相医師主導治験で得られた検体を用いて網羅的発現解析,シングルセル解析等を実施しているが,投与前後の検体を用いて解析を行っており,Ad-SGE-REIC 製剤による腫瘍微小環境の変化を検証することが可能である.今後は,治療効果を層別化するバイオマーカーの同定および治療抵抗性因子を解析する予定である.さらに,治療抵抗性因子に対する阻害薬等を併用することで,Ad-SGE-REIC 製剤との複合免疫療法を開発する(図 3).おわりに膠芽腫に対するウイルス製剤を用いた免疫療法は,膠芽腫の治療抵抗性を打破する新規治療と考えられている.本研究では,膠芽腫モデルを用いた治療機序の解明およびヒト膠芽腫検体を用いた解析を実施することで,Ad-REIC 製剤の治療機序を解明した.今後,治療感受性等に係る分子機序を解明し,臨床実装へ繋げる予定である.謝辞本研究にご支援いただきました,公益財団法人 中外創薬科学財団とその関係者の皆様に深く感謝申し上げます.― 152 ―

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