ける好中球の遺伝子発現を非炎症期の状態に戻す新規治療薬候補と,治療効果に寄与する遺伝子群のリストを取得した.GDTrans-KD による AI 薬効予測で上位であった低分子化合物は,3 種類の濃度でヒト臍帯静脈内皮細胞 (HUVEC) に添加し,30 分後に Human recombinant TNF-α100ng/mL を添加して血管炎を惹起した.3 時間後に mRNA を抽出し,real-time qPCR で IL-1βの遺伝子発現評価をした.IL-1βの発現抑制効果を認めた化合物は,最適濃度で再検証を行った.また川崎病の新規診断バイオマーカー導出のため,川崎病患者のうち初回 IVIG で改善したresponder 群,3rd line 以上の治療を要した poor responder 群,非発熱疾患群(各 n=5)の血漿検体を用いて,DIA プロテオーム解析を実施した.結果及び考察CAWS 群は 1 日後に CD177 陽性の活性化好中球,7 日後に NK 細胞が増加し,28 日後には多彩な免疫細胞の増加を認めた.川崎病患者の末梢血単核球における scRNA-seq のメタ解析において,急性期に活性化好中球が増加していたという既報があるが 5),本研究で川崎病モデルマウスの冠動脈微小環境においても活性化好中球が増加しており,ヒトとモデルマウスの病態の相同性が明らかとなった.IVIG + CAWS 群においては,CAWS 群と比較して細胞分布の変化を認めたが,活性化好中球の増加は完全には抑制できていなかった(図 2).図 2. 冠動脈微小環境における scRNA-seq の細胞種同定と経時的な細胞の分布の変化高次解析として,IVIG の有無による好中球のエンリッチメント解析を実施したところ,IVIG により細胞死や血小板活性化の関連遺伝子は抑制されていたが,NF-κB 経路や好中球の血管内皮へのmigration は抑制されておらず,これらが IVIG 抵抗性の川崎病に対する治療ターゲットとなり得ることを明らかにした.上記で得られた scRNA-seq のデータと,ヒト由来細胞に低分子化合物を添加した 72 万種類の応答遺伝子発現データ (LINCS) を活用して,川崎病に最適化した AI 薬効予測モデル (GDTrans-KD) を構築し,冠動脈炎における好中球の遺伝子発現を非炎症期の状態に戻す新規治療薬候補と,治療効果に寄与する遺伝子群のリストを取得した(図 3A).AI 薬効予測で上位であった 6 種類の低分子化合物を in vitro で検証したところ,4 種類の化合物で IL-1 βの発現抑制効果を認めた.それぞれの最適濃― 139 ―
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