図 2. 心不全原因の内訳これらの情報の内一部は 1 年後追跡期間においても収集し,更に DPC 情報を収集した.更に同意を得られた場合には血清・尿サンプルを収集し,九州大学の冷凍庫にて管理した.拡張型心筋症で血清サンプルを収集したサンプルの中から,ランダムに症例を抽出した.蛋白質は Olink 社 Olink 96 CVD II パネルを使用した.本研究での主要評価項目は心血管死亡 + 心不全入院の複合アウトカムとした.各蛋白質とアウトカムに対し,年齢・性別を調整したコックス回帰分析を行った.有意水準はFalse discovery rate < 0.05 とした.結果及び考察JROADHF-NEXT に登録された 4,016 症例の内,拡張型心筋症は 528 症例であった(図 2).この内436 症例の血清を保管していたため,150 症例を無作為に抽出し,網羅的蛋白質解析を行った.心血管死亡 / 心不全入院と有意に相関する蛋白質として BNP,RAGE,REN,FGF-23 が挙がった(図 3).FGF-23 は過去の報告において,HFrEF (heart failure with reduced ejection fraction) の発症との関連が報告されている.しかし,拡張型心筋症を発症した症例において予後予測に有用である報告はない 2).RAGE は冠動脈疾患との関連を示唆されているが 3),冠動脈疾患と関連のない拡張型心筋症の予後予測に重要であることは報告されていない.これらの蛋白質は拡張型心筋症症例にとって新規のバイオマーカーとなる可能性がある.今後更に対象症例を増やすことにより,更なるバイオマーカーが同定される可能性がある.― 135 ―
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