図 1. JROADHF-NEXT 概要― 134 ―同定は容易ではない.以前までは質量分析により網羅的蛋白質解析が行われてきたが,スループットが低い点が問題であった.近年では抗体やアプタマーを基盤とした網羅的蛋白質解析が可能となり,少量のサンプルから複数の蛋白質を同定出来るようになった.本研究では,網羅的蛋白質解析の基盤となるデータベースを構築し,拡張型心筋症における網羅的蛋白質解析を行うことで,心筋症特異的なシグナルを同定することが目的である.実験方法まず我々は網羅的蛋白質解析を行うためのデータベース JROADHF-NEXT を構築する (UMIN ID: UMIN000036592).JROADHF-NEXT の組入基準は (1) 治療を要する急性心不全入院 (2) 心不全の診断基準が日本循環器学会心不全ガイドライン 2011 に準拠する (3) 20 歳以上 (4) インフォームドコンセントが得られることであり,除外基準は (1) 心移植 (2) 冠動脈血行再建術を必要とする急性冠症候群 (3) 入院死亡 (4) 担当医が不適切と判断した場合である.患者は 2019 年 2 月から 2021 年 6 月まで登録した.患者背景に加え (i) 心臓関連検査 ( 心電図・心エコー・心臓カテーテル・心臓 MRI) (ii) 心肺運動負荷試験 (iii) 脈波伝播速度 (iv) 精神状況 (DS14,Mini-cog) (v) QOL (Eq5D5L, KCCQ) (vi) Frailty (SPPB,6 分間歩行距離,握力,筋重量,Clinical Frailty Scale) (vii) 生活状況 ( 独居か否か,介護申請の有無 ) を含め包括的にデータを収集した(図 1).
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