4. マルチファイバーフォトメトリー• ファイバーフォトメトリー解析により,恐怖条件付け時の電気ショックが海馬や大脳皮質の複数の脳領域を活性化させることが確認された.• 覚醒時と睡眠時で異なる脳領域ペアが同期することが観察された.以上の結果から,恐怖記憶の消去過程における性差や,睡眠が果たす役割の理解が深まり,長期的な情動記憶の調節メカニズムに関する新たな知見を提供するものである 1).学習条件の海馬依存性の違いにより,睡眠の即効的または遅効的効果をもたらしていると考えられる.マルチファイバーフォトメトリーは睡眠時における海馬や大脳皮質等の脳広域における同期活動の細胞種選択的な理解に有用である 2).おわりに学習直後の断眠はニュートラルな記憶だけでなく情動記憶も抑える方向に作用する 3) .トラウマ体験後のお通夜や PTSD における短期的な睡眠障害は適応的意義もあるかもしれない.また,本研究期間において確立したマルチファイバーフォトメトリー等の構造生理学学技術により脳広域回路動態の研究を進めて,睡眠機能の理解を深めていきたい.謝辞本研究をご支援頂いた公益財団法人 中外創薬科学財団の関係者の皆様と本研究を実施した当研究室メンバーに感謝申し上げます.引用文献* 責任著者1. *Daisuke Miyamoto, Mahmoud Abdelmouti Mahmoud, Post-conditioning sleep deprivation facillitates delay and trace fear memory extinction. Molecular Brain, 17(90), 1-11 (2024).https://doi.org/10.1186/s13041-024-01163-w2. *Daisuke Miyamoto, Multi-fiber photometry of multi-region information integration in the prefrontal cortex during fear conditioning and sleep, Toyama Medical Journal, 35, 41-46 (2025).3. Salma E Said, *Daisuke Miyamoto, Multi-region processing during sleep for memory and cognitiion, Proceedings of the Japan Academy, Series B, 101, 107-128 (2025).https://doi.org/10.2183/pjab.101.008― 124 ―
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