― 116 ―上述したように,幅広い標的に特異的に結合するような人工ミニタンパク質の設計パイプラインはすでに確立されている.そのため,本研究提案が実現すれば,(a) タンパク質間相互作用に対する強力かつ特異的な阻害効果と(b)細胞質への高い移行性の両方を兼ね備えた人工ミニタンパク質を作り出すことが可能となる.本研究提案が実現するミニタンパク質の設計パイプラインは,治療標的として利用可能な範囲をヒトタンパク質のプロテオームのわずか 15% から格段に拡大することができ,臨床現場に革新的な治療薬を提供することが期待される.タンパク質科学において,機械学習特に深層学習は極めて強力な手法である.しかし,タンパク質工学の領域においては,一般生物学における研究経験を持つ人材は少なく,生物物理学的に妥当なスクリーニング系の導入・開発が遅れてしまっている.その結果,深層学習の発達などにより必要となるデータの規模が増大し続けているにも関わらず,生物学的に妥当でかつ大規模なタンパク質の性質に関するデータが不足している.本研究が注目する細胞質への移行性に関するデータも例外ではない.本研究によって,得られた細胞質への移行性に関するデータは人工タンパク質業界にとって極めて重要なデータとなることが期待され,データがまとまり次第いち早く公開したいと考えている.謝辞本研究遂行に関わったすべての研究室メンバーと,本プロジェクトの遂行に不可欠なご支援を頂きました,公益財団法人 中外創薬科学財団に深く感謝申し上げます.引用文献1. Feng et al. 2017 Nat. Comm.2. Bruzzoni-Giovanelli et al. 2018 Drug Discov. Today3. Cuadrado et al. 2019 Nat Rev Drug Discov.4. Stevers et al. 2018 J Med Chem.5. Spradlin et al 2021 Acc. Chem. Res.
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