令和6年度_2024_助成研究報告集
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図 1. 本研究提案の概要,基本技術行可能な人工タンパク質は,疾患の治療標的を大幅に拡充するものであり,革新的な医療を実現することが期待される.実験方法本研究における基本戦略は,(i) 人工タンパク質の設計,(ii) 細胞質移行性の大規模定量,(iii) 大規模データ解析,(iv) 人工タンパク質の再設計,というサイクルを繰り返すことである.cDNA displayを活用し数千オーダーのミニタンパク質の細胞質到達効率を並列して測定する新しいスクリーニング系を確立する.mRNA display 法などとは異なり,培地が RNase 含んでいたとしても問題ないことが本手法の利点である.エンドソームなどにとどまっているものと細胞質へと到達できたものとを区別するために,Split-GFP システム 1) を利用する.細胞質には GFP1-10 を発現させておき,人工タンパク質側には GFP11 を結合させておく.すると,細胞質に到達した場合にのみ全長の GFP が形成され,その GFP を GFP-Trap ビーズ上に沈降させることで,細胞質に到達できた人工タンパク質 /cDNA複合体のみを取得できる.結果及び考察知的財産権取得の関係から,結果 / 考察については省略.おわりに臨床研究者たちの懸命な努力により,多くの疾患の原因が明らかとなりつつあるが,皮肉なことに依然としてその原因分子を直接標的とする医薬品はほとんど存在しない.例えば,がんにおける Ras-Raf,Ras-Sos1,Myc-Max タンパク質間相互作用 2),酸化ストレスが関わる疾患における Keap1-Nrf2相互作用 3),アルツハイマー病における 14-3-3 σと Tau 間の相互作用 4)などが挙げられる.抗体などのタンパク質医薬はこれらの部位に結合する能力を持つが,タンパク質医薬は通常,細胞内に入ることができず,細胞内の標的と相互作用できない.また,細胞内に容易に移行可能な小分子は,活性中心など結合するための「ポケット」を必要とする.現時点では,小分子もしくは抗体医薬による治療が中心となっているが,この 2 つのタイプの薬剤だけでは,ポケットを持つ酵素,もしくは細胞表面に存在する受容体などのタンパク質のみ,すなわち,ヒトタンパク質のおおよそ 15% 程度のみしか,現状では治療標的にできない 5).― 115 ―

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