令和6年度_2024_助成研究報告集
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図 1. Ca2+ 依存的 TEN2- 微小管相互作用が抑制性シナプス形成を促進する2. ACC における E/I バランスの多階層評価とモデルへの応用 3)将来的な個体レベルでの介入に備え,前帯状皮質(ACC)における E/I バランスの多階層解析パイプラインを整備した.本系では免疫染色による PSD-95 および gephyrin の二重標識を行い,幾何学的変換と対数変換により,層別シナプス密度の個体間比較が可能となった.このパイプラインを妊娠期 VPA 曝露モデルに適用したところ,ACC における層特異的な E/I バランスの破綻(図 2A)と,社会性行動の障害が確認された.多変量主成分分析(PCA)により,シナプス指標と行動指標の両面から VPA 群と対照群を高精度に分離できたことは,E/I バランス破綻が行動異常と統合的に関連することを示唆する.さらに,自発運動による介入群では,予備的ではあるが,いくつかの PCA 成分において中間的な位置づけを示し,シナプスおよび行動レベルでの部分的な回復が認められた(図 2B).これは,当該パイプラインが将来的な分子介入(例:TEN2 複合体操作)による効果の定量評価に有効であることを実証する結果である.図 2. ACC における E/I バランスの定量と多階層評価― 100 ―

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