2. 組織 ‐ 個体レベルの多階層解析(群馬大学動物実験 24-056 承認)2.1 動物と VPA モデル,運動介入(目的:ASD 様表現型と介入効果の検証)・C57BL/6J 胎生 12.5 日に VPA (500 mg/kg, i.p.) 投与.12 週齢にて試験・3 週齢で離乳後,回転盤入りケージへ移動2.2 脳切片作製と免疫染色(目的:E/I シナプス密度の深度方向プロファイリング)・ACC を冠状 80 µm 切片(Leica VT1200S)・抗 PSD-95/gephyrin 二重染色,Hoechst 併用2.3 深度整合型画像処理(目的:堅牢な統計処理の実施)・Nikon C2 共焦点タイル撮影→ Python でパーティクルカウント・幾何学的変換と対数変換を併用して 1D データへ落とし込み統計処理2.4 行動試験(目的:回路異常に対応する行動指標取得)・社会性試験,作業記憶試験,不安行動試験,活動量試験2.5 多変量統合解析(目的:シナプス・行動指標の統合パターン抽出)・Python (pandas, scikit-learn) で PCA を実施結果及び考察1. TEN2 と微小管複合体形成の分子機構(投稿準備中)TEN2 の細胞内ドメインは,内在的無秩序領域(IDR)を多く含み,COS-7 細胞内で核内ドロップレットを形成した.また,膜固定型 TEN2 ビーズの周囲に可溶性 TEN2 が集積する様子を固定細胞観察により確認し,2 次元的な液 - 液相分離(LLPS)が細胞膜上でも成立することが示された.TEN2 は微小管先端結合タンパク質 EB と直接結合し,両者は in vitro で共相分離を形成することが表面プラズモン共鳴法および共局在解析により確認された.一方,細胞内ではこの結合が必ずしも生じないことから,TEN2 の EB 結合モチーフ周辺に存在する負電荷が静電反発により結合を抑制している可能性が示唆された.この仮説を検証するため,負電荷中和変異体を作製したところ,EB との共局在が著明に増加し(図1A 下段),微小管への TEN2 集積が促進された.さらに,神経細胞への KCl 刺激によるカルシウム流入により,内在性 TEN2 でも微小管結合型 TEN2 の面積の上昇が観察され(図 1B 上段),同時に抑制性シナプスの面積上昇が確認された(図 1B 下段).これらの結果は,TEN2 が Ca²+ 依存的にEB と相互作用し,LLPS 状態で微小管を局所的にリクルートすることで,抑制性シナプスの構築に関与するという新たな作動モデルを支持するものである.― 99 ―
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