図1. ステロイドホルモンる酵素であるα-ketoglutarate (α-KG)依存性オキシゲナーゼに着目した.α-KG依存性オキシゲナーゼは,動物,植物,微生物に広く分布し,DNAの酸化修飾による遺伝子発現調節から二次代謝産物の生合成まで多様な生体内反応を担っている2).これらの酵素は位置特異的,立体特異的C-H結合活性化を介した酸化反応を触媒する.特に,二次代謝産物の生合成酵素においては,単純な水酸化のみならず,複雑な骨格変換反応などの多様な反応を触媒することが見出されている.本研究においては,二次代謝産物生合成に関わる糸状菌由来α-KG依存性酸化酵素を利用した生物活性物質の誘導体化を目的として,酵素の機能を改変した生体触媒の開発とそれらを利用した非天然型新規化合物の創出を試みた.実験方法生物活性を示す化合物として,生理活性ステロイドホルモンprogesterone (1), estra-4,9-diene-3,17-dione (2), 4-androstene-3,17-dione (3) やその他抗酸化活性を示すフラバノイド化合物(4, 5)を用いた.α-KG依存性オキシゲナーゼとしては,我々のグループによって最近解析された糸状菌Talaromyces purpureogenusからのヘテロ二量体型のα-KG依存性オキシゲナーゼ,TlxI-Jを用いた3).TlxI-Jは,メロテルペノイド化合物,talaromyoalideの生合成に関わる酵素であり,基質のC-9位およびC-5位に段階的な水酸化反応を触媒し,C-9α/C-5α,C-9α/C-5β水酸化物を生成する.その後さらに骨格変換を伴った酸化反応によりtalaromyoalideの複雑骨格形成を触媒する(図2).酵素反応は精製酵素と基質,α-KG,アスコルビン酸を混ぜ合わせ試験管内で反応を行った.酵素の機能改変は進化工学の手法により機能が変化した変異体を取得し,精製酵素を用いた評価を行った.― 97 ―
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