中外創薬 助成研究報告書2023
94/324

図2. MHAT/RPCによる四員環複素環合成図1. オキセタン gem-ジメチル基はヒドロキシ化といった代謝を受けやすいメチレン分子の代わりに使用されていたが,水溶性が低いことが問題であった.そこでgem-ジメチル基の生物学的等価体であるオキセタンに置き換えることで,水溶性を増大させるとともに,5および6員環エーテルよりも優れた代謝安定性をもたせることができる.他にもカルボニル基の生物学的等価体としても知られている.カルボニル基をオキセタンに置き換えることによって,α位の脱プロトン化や酵素による求核攻撃を抑えることができる.例えば,Carreiraらは催奇形性が社会問題となったサリドマイドのカルボニル基をオキセタンに置き換えることによってラセミ化を抑制し,有効な治療薬としての可能性を示した2).本研究では,MHAT (metal-catalyzed hydrogen atom transfer)/radical polar crossover機構3)を駆使した新たな環化異性化による四員環複素環合成を見出した(図2)4).この戦略により,構造的に複雑で多様な四員環複素環の合成が可能となり,これまでにない幅広い基質一般性と優れた官能基許容性を実現した.特に創薬研究において重要な役割を果たすスピロ構造を含む多くの化合物を中心に合成した.実験方法我々は,コバルト錯体,N-フルオロピリジウム塩,テトラメチルジシロキサンを用いたアルケンのヒドロ官能基化反応の研究に取り組んでいる.本反応はアルケン部位からカチオン種を位置選択的に作り出し,同一分子内の官能基による求核反応が進行する.今回我々はコバルト触媒反応を応用したオキセタン構造の新規合成法開発も可能であると考えた.まず,用いる原料1は市販の2-Indanoneから1工程で合成している(図3).その後は反応条件の最適化と一般性の検討を行った.― 92 ―

元のページ  ../index.html#94

このブックを見る