中外創薬 助成研究報告書2023
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図3. 胆管増生に伴う交感神経増生1.2.交感神経刺激による胆管増生の制御1.2.1 胆管増生に伴う交感神経線維の増加慢性肝疾患時には,胆管増生を伴う上皮組織のリモデリングが誘導される.マウスにDDC-dietを与えて胆管増生を誘導し,蛍光免疫染色を用いた解析を行ったところ,増生した胆管周囲で神経線維の増加が認められた(図3A).次に,定量PCRを用いて肝臓構成細胞における交感神経伝達物質に対するレセプター発現を解析した.門脈域線維芽細胞(PMC)胆管上皮細胞(Cho)肝星細胞(HSC)においてβ2-adrenergic receptor (Adrb2)の発現が高かった(図3B).一方,胆管上皮細胞ではAdra1aの発現も認められたが,ポジティブコントロールであるBrainとの発現量の比較から,交感神経刺激を受け取るレセプターは主にAdrb2であると考えた.1.2.2 βADR アゴニストによる胆管増生の促進交感神経刺激が胆管増生に影響を受けている可能性を考え,DDC-dietを与えると同時にマウスにADRbのアゴニストであるIsoproterenol(ISO)を投与した.蛍光免疫染色の結果を定量解析し,Ki67(+)の増殖性の胆管上皮細胞が増加し,CK19(+)の胆管領域が拡大していることを確認した(図4).以上の結果から,交感神経刺激により,慢性肝障害によって誘導される胆管増生が促進されることが明らかになった.― 79 ―

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