中外創薬 助成研究報告書2023
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図2. 肝臓へ投射する自律神経の解析組織の線維化については,Sirius red染色を行った後,画像解析によって染色部位を定量した.細胞培養前灌流液(EGTA溶液)と灌流液(コラゲナーゼ溶液)を用いてマウス肝臓組織を灌流した後,残渣をさらにコラゲナーゼとヒアルロニダーゼで処理し,細胞を分散した.EpCAM(+)胆管上皮細胞とThy1(+)門脈域線維芽細胞 (Periportal mesenchymal cell, PMC) をMagnetic cell sorter (MACS)で分離した.コラーゲンコートしたディッシュで1週間培養した後,ISOを添加し,2時間後に細胞を回収した.cAMPのELISA kitを用いて,細胞内cAMP濃度を定量した.門脈域線維芽細胞による胆管上皮細胞の増殖制御を調べるために,門脈域線維芽細胞にISOを添加して2日間培養し,上清を培養中の胆管上皮細胞に添加した.WST1 assayを用いて,培養上清添加群と非添加群の胆管上皮細胞の細胞数を比較した.また,FGFシグナルの寄与を調べるために,胆管上皮細胞培養にFGF receptor 2 (FGFR2)の中和抗体を添加し,細胞数をWST1 assayで評価した.結果及び考察1.交感神経による慢性肝疾患時の上皮組織リモデリングの制御1.1.肝臓組織での神経線維分布の解析肝臓内の自律神経分布を調べるために,健常マウス組織の免疫染色を行った.まず,食道に沿って走行するVAChT(+)迷走神経束とそれに並走するTH(+)神経線維を同定した(図2A).TH(+)神経が肝臓の方へ分枝していたのに対して,VAChT(+)線維の肝臓方向への分枝は認められなかった.さらに肝臓組織内の観察を行ったところ,ほぼすべての神経線維はTUBB3+TH+であり,VAChT+の神経線維は認められなかった(図2B).肝内自律神経は交感神経のみで構成されていることを確認した.― 78 ―

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