図1. 発生と再生における胆管および自律神経ネットワーク形成と再構成を用いた交感神経除去による肝臓の脂肪化抑制などが報告されている 3).以上のように,肝臓の生理的機能や代謝性疾患への自律神経の関与が認知されている一方で,肝臓を支配する自律神経ネットワークの形成過程,疾患や再生における上皮組織リモデリングに対する自律神経の寄与などについては充分な解析が行われてこなかった.申請者は,発生過程において肝臓の自律神経支配が確立される過程および肝障害時の神経線維の退縮と再生のメカニズムについて研究を行い,胆管上皮細胞およびその周囲線維芽細胞が分泌するNGFが,肝臓組織への自律神経の伸長および障害後の神経ネットワークの再構築において重要な役割を果たすことを報告した(図1)4).本研究では,慢性肝障害による上皮組織のリモデリングや線維化など病態進行において,自律神経が果たす役割を解明することを目指した.実験方法マウスモデルマウスに0.1% 3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC)を含む餌を2週間与え,胆管増生を伴う慢性肝障害を誘導した.マウスに12~16週間thioacetamide (TAA)を含む水を与え,胆管増生と肝線維化を伴う慢性肝障害を誘導した.交感神経の活性化あるいは遮断を行うために,adrenergic receptor のアゴニストであるIsopreoternol (ISO)とアンタゴニストであるPropranolol (PPL)を皮下注射した.組織解析肝臓組織における神経分布を調べるために,神経マーカーTubulin β3 (TUBB3),交感神経マーカーTyrosine hydroxylase (TH),副交感神経マーカーvascular acetylcholine transporter (VAchT),シナプス分泌小胞マーカーsynaptophysin (SYN)に対する抗体を用いた.肝構成細胞を同定するために胆管上皮細胞マーカーepithelial cell adhesion molecule (EpCAM),門脈周囲線維芽細胞マーカーThy1に対する抗体を用いた.蛍光免疫染色を行った後,共焦点顕微鏡を用いた解析を行った.肝臓― 77 ―
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