パク(Senoprotein)」と定義し,加齢同期を担う分子の一つとしてその病的意義の解明に挑んだ.開始時点までに行っていた予備的検討の結果AFPは循環血液中で老化及び肥満に伴い上昇し,全身臓器(心臓(左心室及び心房),肝臓,腎臓,骨格筋)の線維化を促進することで老化に伴う病的形質の進展に中心的役割を担う可能性が高いと考えられた.HFpEFの分子機序は未だ未解明な点が多いが,心臓の線維化による拡張不全が主たる病態である.MASHは肝臓の線維化が主たる病態の一つである.HFpEやMASHの治療法は極めて限定され新規治療法の開発は急務である1).そこで,本研究課題においてMASH,HFpEFにおけるAFPの病的意義を明らかにし,同分子を標的とした新規治療法の開発を目指した.実験方法1. A-FiDとしてのHFpEF,MASH疾患概念の確立とマウスモデルを用いた検討研究開始時点までの予備的検討の結果,AFPは,1)ヒト老化個体,2)高度左室拡張不全症例,3)肥満モデルマウスの血漿で上昇することが明らかになっていた.AFP全身ノックアウト(KO)マウス,褐色脂肪特異的KOマウス(AFPは褐色脂肪で主に産生される)を用いて検討を行った.あらゆる分子生物学的手法を用いた検討によりMASHやHFpEFにおけるAFPの病的意義を明らかにし,治療標的となりうるか詳細な検討を行った.2. AFPを標的としたMASH,HFpEF治療法の開発本研究課題に先行する形で行なった検討において,様々な遺伝子改変動物を用いた検討の結果,MASH における,AFPの病的意義が明らかになりつつあった.ペプチドワクチンを用いた系で,AFPを抑制できるか検討を行なった(中神らとの共同研究).AFPに対するペプチドワクチンを用いた検討の結果,ワクチンを投与したMASH肥満モデルマウスの肝臓で線維化が抑制されることがわかっていた.そこで,AFPペプチドワクチンにより心臓の線維化が抑制されHFpEFの病態が改善するか検討を行なった.AFPペプチドワクチンの系に加え,中和抗体を用いて本分泌分子を抑制する系の確立を目指した.AFPを抑制するスクリーニングの系の確立も目指した.また,ヒト化AFP過剰発現モデルマウスを作製し,AFP中和抗体により肝臓や心臓の線維化が抑制されるか検討することを目指した.3. AFP制御メカニズムの検討バイオインフォマティクスの手法等を用いた検討の結果,AFPが主に褐色脂肪で産生されること,AFPのプロモーター領域に転写因子であるcFOSが結合し,発現を生に制御する可能性が示唆されていた.肥満マウスの褐色脂肪を用いcFOSのレベルを検討したところ,高脂肪食負荷時には褐色脂肪のcFOSの発現が上昇することがわかった.そこでcFOSを発現するアデノ随伴ウイルスを作成し,代謝ストレス→cFOSの核への移行→AFP発現レベルの上昇,という経路を検討することとした.老化に伴い褐色脂肪でAFPが増加することも確認されているが,詳細な機序の解明に挑んだ.4. HFpEFにおけるAFPのバイオマーカーとしての検討(回顧的検討)新潟大学循環器内科が保有するバイオバンクを用いた検討の結果,1)老化個体,2)高度左室拡― 73 ―
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