図3. 加齢によるアポトーシス促進・酸化ストレス応答・オートファジー制御関連遺伝子プロモーターにおける活性化ヒストン喪失遺伝子プロモーター領域で活性型ヒストン修飾(H3K4me3)と抑制型ヒストン修飾(H3K27me3)が共局在し遺伝子発現を「待機状態」におく,いわゆるbivalent修飾は多能性幹細胞で見出され,造血幹細胞においても比較的少数のゲノム領域においてbivalent修飾が見られることが報告されていた6).そこで加齢によるこれらbivalent修飾の変化を調べたところ,古典的Wntシグナルやレチノイン酸シグナルを含む幹細胞増殖の負の制御遺伝子7,8)においてbivalent修飾がみられ,このうち古典的Wntシグナル関連遺伝子プロモーター領域において加齢とともに抑制型ヒストンが失われることが見出された(図4).造血幹細胞の無秩序な増殖はその機能低下とともに幹細胞老化の主要な兆候であるが,われわれの結果から増殖制御について,その主要な制御(増殖抑制)シグナルがbivalent修飾による発現待機状態にあること,および加齢によりこれらのbivalent修飾部位の一部から抑制性ヒストンが喪失することが,造血幹細胞の無秩序な増殖の引き金になることが示唆された.図4. 幹細胞増殖抑制関連遺伝子プロモーターにおけるbivalent修飾と、加齢による抑制型ヒストン喪失― 50 ―
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