図2. Setdb1のユビキチンE3リガーゼの同定った.一方,Setdb1については,HP1 との相互作用モチーフであるPXVXL 配列に着目し,344-348 番目と617-622 番目のアミノ酸配列に変異を導入した.このうち,617-622番目のPLLVPL 配列をALLAPA に置換した変異体(Setdb1-3A)がHP1 との結合能を失うことを見出した.これらの変異体のタンパク質安定性を解析したところ,予想通り,野生型と比べて分解が亢進していることが明らかになった.[Suv39h1 のユビキチン化部位の同定]FLAG標識したSuv39h1 の野生型とΔN変異体を,マウス胚性幹細胞に発現させた.次に,FLAG 抗体を用いた免疫沈降法によってこれらのタンパク質を精製し,質量分析法(IP-MS/MS)によりユビキチン化修飾を受けるリジン残基の同定を試みた.[Setdb1 のユビキチンE3 リガーゼの同定]近年開発されたTurboID 法は,ビオチンリガーゼの一種であるBirAの改変体を目的タンパク質に融合することで,そのタンパク質の近傍に存在するタンパク質を同定することができる10).本研究では,Setdb1の野生型とHP1結合能欠損変異体(Setdb1-3A)にTurboID を融合したタンパク質を構築し,これらを安定発現するマウス胚性幹細胞株を樹立した.細胞にビオチンを添加することでSetdb1近傍のタンパク質がビオチン化されるため,ビオチン化タンパク質を精製・同定することで,Setdb1 やSetdb1-3A と相互作用する因子の同定を試みた(図2).結果及び考察Suv39h1 とSetdb1 のHP1 結合能とタンパク質安定性の相関 Suv39h1のN末端41 アミノ酸を欠失したΔN変異体は,HP1 との結合能を失うとともに,速やかにタンパク質分解を受けた.一方,Setdb1については,617-622番目のアミノ酸配列に変異を導入した変異体(Setdb1-3A)がHP1 との結合能を失い,タンパク質分解の亢進が観察された.これらの結果から,Suv39h1 とSetdb1 の安定性は,HP1 との相互作用に依存していることが示唆された.― 43 ―
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