中外創薬 助成研究報告書2023
321/324

細胞内における光増感能について,HeLa細胞にINA-mDEAを添加し,遮光条件,光照射条件における細胞生存率を算出することで評価行った.光照射条件においてINA-mDEAの濃度依存的な毒性が明らかとなった (Fig 1e).共焦点レーザー顕微鏡撮影における観察ではINA-mDEAは脂肪滴において発光を示し,この発光はAIEEによるものであると考えている.さらに,INA-mDEAを取り込ませたHeLa細胞および3T3-L1細胞に光照射しながら経時的に観察を行ったところ,ブレッピングを伴う細胞死が確認された.以上の結果より細胞中においても光増感剤作用を示すことが明らかとなった.Fig1. (a) INA誘導体の構造. (b) 様々な極性下における吸収・蛍光スペクトル. (c) DMPO-OOHアダクトによるESRスペクトルの増大. *はMnマーカーを示す. (d) 各誘導体のESRシグナルピーク高さ推移. (e) 遮光条件(黒)及び光照射条件(赤)における細胞生存率.おわりに本研究では重原子フリー光増感剤の開発を行った.INA-mDEAはスピン軌道電荷移動に起因した光増感作用を示し,さらに溶液中でAIEEを示すことが明らかとなった.重原子フリーな光増感剤は生体に対する毒性の面から好ましく,凝集挙動に関してはEPR効果によるがん組織特異的な集積が期待される.本研究の特徴を活かしながらさらなる光増感能の改善を行うことによって標的指向性を有する効果的な光増感剤の開発を行っていく予定である.謝 辞本研究は公益財団法人 中外創薬科学財団および日本薬学会長井記念薬学研究奨励支援事業の助成により遂行されました.引用文献 1. 10.1021/jp800561g, 2008.·- を発生させることが示された.INA-mDEAは電子ドナーとアクセプターがねじINA-mDEAはO2れた構造をとるため,スピン軌道電荷移動1) が促進され,項間交差が促進された結果,光増感能を示したと考えられる.― 319 ―

元のページ  ../index.html#321

このブックを見る