中外創薬 助成研究報告書2023
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唐澤 悟 昭和薬科大学薬学部薬品分析化学研究室 教授― 318 ―·- 及び ·OH のインジケータ) 共存下においてESRシグナルの経時的増大が確認された (Fig 1c-d).ESRシ·- をトラップしたDMPO-OOHアダクトを検出していることが分かり,グナル形状よりDMPOがO2はじめにがん組織に分布した光増感剤は外部からの光照射によって励起され,三重項酸素から一重項酸素やスーパーオキシドなどの活性酸素種 (ROS) を発生させ,がん細胞を死滅させることが可能である.光増感剤の励起後,ROSを発生させるまでの過程において禁制遷移である項間交差を経なければならない.優れた光増感作用を実現させるためには項間交差を促進させる戦略が必要である.項間交差を促進させるために光増感剤分子内に重原子を導入し,重原子効果を図る方法は項間交差を促進させる戦略の1つであるが,毒性の観点から重原子フリーな分子設計が求められている.一方,光増感剤をがん組織特異的に集積させることによって低濃度投与で良好な治療効果が期待できる.がん組織周辺の血管は透過性が亢進しており,粗大粒子を集積させることが可能であり,この効果はEPR効果として知られている.本研究では将来的にEPR効果を視野に入れた凝集誘起発光 (AIEE) を示す重原子フリー光増感剤の開発を目的とし,光増感剤の合成と機能性の評価を行った.実験方法分子内で電子ドナーと電子アクセプターを有する化合物の設計・合成を行った.得られた化合物について基礎的分光特性,AIEE特性を吸収・蛍光スペクトル測定により評価した.さらに,光増感能についてESR測定,細胞毒性試験を行い評価した.結果及び考察電子ドナー,アクセプターを有する化合物3種 (Fig 1a) を合成し,機能性評価を行ったところ,INA-mDEAが最もROSを発生させることが分かった.INA-mDEAは吸収極大波長 ~380 nmに示され,蛍光極大波長は溶媒の極性に依存し,550–583 nmに示された (Fig 1b).さらに良溶媒と貧溶媒の体積比を変化させた分光測定によりAIEE特性を示すことが明らかとなり,生体中の環境下において凝集によるEPR効果が期待される.各ROSインジケータ共存下,光照射条件で経時的にESR測定を行ったところDMPO (O2凝集誘起発光を示す重原子フリー光増感剤の開発松本 祥汰2022.4 ~ 2024.3

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