― 314 ―結果及び考察1. SCATシステムを応用した特異的センサーの最適化AlphaFold2を用いて,前年度に開発したセンサーの切断配列に網羅的に改変を加えた際の切断効率を評価した.未発表成果のため詳細は割愛するが,より感度が高い切断配列の提案に成功し,それに従って作製した新規改変センサーは前年度のものよりも高い感度を示した.現在,この改変センサーを用いて,候補遺伝子の機能解析を実施中である.2. 繊毛病関連タンパク質HYLS1の機能解析前年度までの情報学的解析から,48候補遺伝子の中の1つであるHYLS1が中心体の形成自体に寄与することが示唆されていた.実際に,このHYLS1遺伝子にコードされる繊毛病関連タンパク質HYLS1の発現を抑制したヒト由来培養細胞では,中心体の形成・機能異常が確認された.解析を進めた結果,中心体の主要な構成要素である中心小体という円筒型構造のもつ基本骨格,三連微小管の形成にHYLS1が重要であることがわかった.さらに,このHYLS1が微小管の構成要素であるβチューブリンの特異的アイソタイプと結合し,三連微小管の形成を促進する分子メカニズムを解明した.以上の研究成果を学術論文としてまとめ,今年度中に発表した3).おわりに上述の通り,候補遺伝子群の機能解析における要であるセンサーの開発,及び,最適化が完了した.よって,この新規改変センサーを用いた候補遺伝子群の高効率解析により,本研究の加速度的な進展が見込まれる.また,候補遺伝子の情報学的解析の過程で得られた副次的な結果が新たな発見につながり,大きな波及効果を生んでいる.謝 辞本研究は公益財団法人 中外創薬科学財団の奨学金の支援の下,申請者を中心に実施されました.この場を借りてお礼申し上げます.引用文献 1. doi: 10.1038/s41586-021-03819-2, 2021.2. doi: 10.1093/hmg/ddi157, 2005.3. doi: 10.1038/s41467-024-46454-x, 2024.
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